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第五話:ロロノを侮った代償

~【豪】の魔王アガレスのダンジョンにて~


【豪】の魔王アガレスは高笑いをしていた。

 まさか、一度目の襲撃で【創造】の魔王プロケルの戦力の要である、エルダー・ドワーフを奪えるとは思っていなったのだ。


 あの方から人工英雄を借り、さらに別の魔王の力で生きる魔物収納袋と化す奇策で不意をついた。


 人間という弱いが素質のある存在を極限まで鍛え上げることでAランクの魔物並みにするあの方は恐ろしい。

 そして、その人間を魔物を運ぶ道具に作り替えるあいつの能力は便利だ。あいつは、本人もその魔物も弱いが役に立つ。


 とはいえ、運べる魔物の量はたかが知れていた。

 今回はあくまで、襲撃が起こった際のアヴァロンの動きを知るための威力偵察にすぎなかった。


 後に大規模な襲撃をするための捨て石。

 そんなことに己の魔物を使うのは気乗りはしなかった。

 しかし、ターゲットが自分からのこのこと現れて、あっさり捕まってくれた。

 英雄クラスの冒険者が二人いたとはいえ、拍子抜けもいいところだ。


「オデ、これで、同盟のナンバー2。それだけ、違う。エルダー・ドワーフ手に入れた、オデ、強くなる。オデの軍勢が、みんな強い武器手に入れる。楽しみ」


【豪】の魔王アガレスが笑っているのは、なにも作戦に成功したからだけじゃない。

 エルダー・ドワーフを手に入れたからだ。通常、他の魔王を支配するには、魔王の同意のもと支配権を譲ってもらう必要がある。

 しかし、かれは違う。

 彼は【豪】の魔王。すべてをすりつぶし屈服させる。

 それは純粋な破壊力だけにとどまらない。

 精神すらすりつぶし、操り人形にしてしまう能力を持つ。


「プロケルには感謝。間抜けで助がった」


 アガレスは魔物の帰還を待ちわびていた。

 彼の魔物は途中までは異空間を通り、地上に出てからは合流場所にいた別の魔物に運ばせる。


 異空間を通ったほうが安全だが、異空間内で移動できる距離には制限がある。

 何より、地上のほうがはやい。これだけアヴァロンから離れれば、見つかることもないと判断したからだ。


 ……彼は知らない。その判断で墓穴を掘っていたことを。

 もし、異空間で進み続けていれば襲撃者の正体はばれなかったかもしれない。


【豪】の魔王の魔物がロロノだと思い込んで持ち帰っているロロノ人形は、バッテリーに限界があるため、常に電波を出しているわけではない。超強力な電波を五分間隔で出す。


 異空間系の魔物が息継ぎに地上に出る必要があるとはいえ、すぐに異空間に戻れば電波の限界距離である二百キロを超えられたかもしれないのだ。


 だが、愚かにも地上に出て移動を始めてしまった。

 その時点で、電波は無事アヴァロンに送信され、受信機をもった飛行型のゴーレムがアヴァロンを出発した。


 アヴァロン・リッターの中でも最強の三騎士。

 空を統べる白騎士だ。

 それはゴーレムでありながら、異様な姿だった。

 長大な流線形の砲に装甲と翼が付いた、いうならば戦闘機。


 開発者のロロノ曰く『空戦遠距離戦闘特化型に手足はいらない、むしろ空力上邪魔なだけ』という考えのもと、空力と砲撃能力だけを追求した結果、このような異様な見た目になった。


 徹底した空力の追求と、超高出力バーニアにより、その速度は

音速の三倍を軽く超える。

 全力で彼は飛翔する。


【豪】の魔王のダンジョンは、アヴァロンから約320キロ離れており、彼のダンジョンまでは電波が届かず捕捉できない。


 そうなることを想定しロロノは白騎士に電波を受信次第、そこへ向かって飛ぶように指示を出していた。


 白騎士はその圧倒的な速さで、ロロノ人形を運ぶ【豪】の魔王の魔物たちに追いついた。


 白騎士のコンセプトは空戦と遠距離砲撃。

 その気になれば、あっさりと【豪】の魔王の魔物を駆逐し、ロロノ人形を取り戻すことはできるが、超高度から気付かれないように監視するだけだ。


 白騎士の目的はロロノ人形の奪還ではない。

 襲撃者の魔王と、そのダンジョンの特定。手を出さずにダンジョンに入るところを見届ける。

 何も知らない【豪】の魔王の魔物たちはダンジョンに帰還してしまい、その様子を白騎士はしっかりと見届ける。


 敵対者のダンジョンへの帰還を見届けた白騎士は、アヴァロンに向かってバーニアを全力で起動し飛翔する。

 一秒でも早く、主であるロロノに敵のダンジョンの位置を伝えるために。


 ◇


【豪】の魔王アガレスは、魔物の到着を聞いて歓喜した。

 早速、己の部屋へと運ばせる。


 多くの魔王は、己の部屋というのを用意する。【魔王の書】で作れる部屋の中には、魔王を満足させるためだけの機能に特化した部屋が多数用意されていた。


 彼の部屋は成金趣味であり、手に入れた財宝をいくつも見せつけるように配置していた。

 部屋の中央に、大きく豪奢なベッドがある。


 彼の能力を活かすためのものだ。

 部下たちがエルダー・ドワーフを運んで来た。

 予め、毒サソリ型の魔物に神経毒を撃ち込ませて動けなくしている。


【豪】の魔王は下卑た笑いを浮かべる。

 彼は少女が好きだ。それも、女性として成長し始めた年頃にもっとも興奮する。

 そういう意味でロロノは好みにぴったりで、なおかつ極上。


「いい、最高だ。オデ、もう我慢できない。幼いメス、オデのための女」


【豪】の魔王は自らの能力を行使するために服を脱ぐ。

【豪】の魔王の能力は【豪】。単純な攻撃力、防御力の増加の他に、女性の尊厳を踏みにじることで屈服させる力がある。


 ある意味、【邪】の魔王の能力に似ている。

【邪】の場合は、犯した女性を母体にして魔物を生み出すが、【豪】の場合は本人を支配する。


 実のところ、性行為を能力のトリガーにする魔王は一定数存在する。

 それは、魔王という存在の成り立ちに関係していた。

【豪】は満面の笑みを浮かべて、ロロノの服を力任せに引き裂いた。

 幼く、未発達だが妖精じみた美しさのある肢体が露わになる。


「おまえ、今からオデのものになる。おまえ、可愛い。支配したあともたっぷり可愛がってやる。いいごと考えた、おまえを使ってほがのプロケルの魔物を呼び出して嵌めて、おでのものにする、おまえ以外にも、可愛い魔物いた。全部おでのもの」


【豪】の魔王がロロノにのしかかった。

 彼は、ありとあらゆる五感を使い幼い肢体を貪る。


「いい匂いだ。おいぢい。おで、うまい、おまえもきもぢいい」


 ロロノはぴくりとも動かない。

 いつのまにか、カチカチカチと機械音が鳴り始めていた。


 幼い肢体を貪っている【豪】の魔王は気付いていない。

 そして、いよいよ己の分身を押し入れようとしたときだった。

 激しい閃光と共に、凄まじい爆発が起こる。


 ロロノ……いや、ロロノ人形が爆裂した。

 ここは密閉された部屋だというのも最悪だ。

 爆風の逃げ場がなく、その破壊力が部屋の中を暴れまわる。


 もしものときのために、部屋の中に待機していた【豪】の魔王の魔物は消滅した。

 ロロノがクイナでもただでは済まないと言い切る威力なのだ。

 並みの魔物では耐えられはしない。

 そして、【豪】の魔王本人は……。


「オデ、オデのアレが、アレがないいいいいいいいいいいいいいい、オデのおおおおおお、オデのおおおおおおおおおおおおおお」


 彼は辛うじて生きていた。【豪】の能力で強化された体のおかげだ。

 だが、あまりにも至近距離で脆い部分を晒していたものだから、自慢の逸物は消失していた。


「ああああああああああああああああ、オデえええええええええええ、もう、ぎもぢいいごと、デキナイ。許さないいいいいいいいいいいいいいいいいい、こんな卑劣な罠、卑怯、絶対、絶対、許さないいいいいいいいいいいいいい、ごろす、プロケルも、エルダー・ドワーフもごろすううううううう」


 半狂乱で【豪】の魔王は叫び続け、暴れまわる。

 彼にとって、己の逸物は何よりの自慢であり、その能力を行使するうえで重要な器官だった。

 そこに、彼の魔物が入ってくる。


 ダンジョンの運営を任せている知性を持つ高位ゴブリンの魔物たちだ。

【豪】のメダルを使うと、ゴブリンやオークなどの魔物が生まれやすい。


「アガレス様、報告です」

「あどにしろおおおおお、オデえええええええ、ぶちぎれてるううう」

「いえ、超緊急事態です」


 そう言われて、【豪】の魔王は近くに転がっていた、もとは装飾品だった溶けた金塊をゴブリンに向かって投げつける。それは、ゴブリンの顔すれすれに突き刺さった。


「つまんねええええごどだったら、おで、おまえ、ぶっごろす」


 ゴブリンは震えながら、それでも己の職務を果たすために報告する。


「多数の魔物が我がダンジョンに侵入し、我らを蹂躙しております。その先頭にいるのは【創造】の魔王プロケル。そして、伝言があります『貴殿の宣戦布告は受け取った。我が娘を手にかけようとした罪、死んで償え』」


 言い終わったゴブリンの頭がつぶれる。

【豪】の魔王アガレスの八つ当たりだ。


「なで? なで? オデだとわがった? なでええええええ!?」


 彼は混乱していた。

 一人では勝てないからこそ同盟を組んだのに、こんな突然の襲撃では救援を呼ぶ時間もない。


 最高に好みの女を蹂躙し、支配し、最強の力を手に入れたという幸せの絶頂から恐怖のどん底へと、彼は一気に叩き落されていた。


 彼は愚かだったのだ。

 エルダー・ドワーフ。Sランクの魔物にして、世界最高の鍛冶師がたやすく捕まるなどありえない。

 その時点で罠だと疑わなければならなかった。

 そして、その愚かさのツケは今から払わないといけない。

 もうすでに死神に目をつけられてしまったのだから。

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