幕間 パパと息子
待ちに待ったこの日が来た!そう、息子とのふれあいの日!いやー、息子が生まれるまで長かった。長女、次女ときてやっと念願の息子!長女は魔法の才能にあふれ、次女は剣の才能、おそらく3人目の息子には何一つ才能はないだろう。だがそこがいい!才能がなければ教える時間がたくさんとれるではないか。あっさり覚えてしまうような娘たちとは違い手を焼くに違いない。まずなにがいいかな。一緒に未開の地へ行き野宿をしながらの冒険。血沸き肉躍るような戦いを息子とともに潜り抜けて行くのは父親として当然の夢!そうだなー、まずは剣を作ってやるか。抱っこのついでに腕の長さ、手の大きさを確認しよう。
そんなことを考えながら恐ろしいほどの速さで部下を指導していく。剣を振るい檄を飛ばす。そんな彼こそが第一剣騎部隊隊長アルフェイド・フォン・バルドフェルドである。
まずこの国の貴族について説明しよう。この国では貴族階級が王族を除き、剣騎貴族、魔法貴族、槍騎貴族、弓騎貴族の4つに分けられる。さらにそこから6つの等位に分けられていく。等位以外に優劣はなく、一番上が王族、次が剣騎一等位貴族といった具合だ。そして重要なのは等位は立てた武勲によってのみ上がる。つまり一等位にいる者たちはすべからく強い。アルフェイド・フォン・バルドフェルドは剣騎一等位貴族である。ニヤニヤしながら部下を苛めている変態のように見えるものの実は強く立派なパパなのである。
「よし、今日はここまでだ。皆いつもの通りあとは苦手を克服するもよし得意な部分を伸ばすもよし各々修練に励むように。私は今日はここであがる。何か起きたら屋敷へ使いを寄越してくれ。」
そう言いながらあたりを見回し修練場を後にする。何か話しかけられた気もするが今日は帰る。と背中で語りながら割り当てられた個室へと急いで行く。
ちゃっちゃと着替えて息子とふれあいだぜ!汗臭いと嫌われるかもしれんから軽く汗を流してから行こう。楽しみだなー。初の息子!
急ぎ汗を流し着替えてから愛馬にまたがり帰路を急ぐ。そして屋敷につき家臣に馬を任せ息子の部屋へと速足で向かい勢いよくドアを開ける。
「ただいま!息子よ、パパのアルフェイドだ!さぁ抱っこしてあげよう!!」
息子を抱き上げようと手を伸ばす。
「―――――っ」
それに反応してものすごい勢いで泣き出す息子。
「パパに抱っこされるのを泣いて喜んでくれるとは!パパはうれしいぞ!高い高いをしてあげよう!そうれって、どうしたのだリーフェ。そんな綺麗な笑顔を向けて。心なしか目が笑っていないようだが?」
いつの間にか妻リーフェが笑顔で夫を見つめていた。
「そんなことはないわ。とにかく泣いている息子を渡していただけますか?」
「あ、あぁ。」
から返事をしながら愛しの息子を妻へと渡す。
うむ、何か私がよからぬことをした時の顔だったな。あれか、息子が泣くほど喜んだのがそんなに気に入らなかったのか?まったくやきもちとは可愛い奴め!
そんなことを思いながら息子をあやし授乳する妻を見つめる。まず実感するのは念願の息子が生まれたこと。そして愛する妻が元気であるということ。守るべき者たちが確かに今目の前にいるという事実。大切なものがまた一つ増え様々な思いを胸に刻みながら見守るのであった。
「隊長普段は怖いくらいキリっとして、鋭い剣のような人なのに今日はちょっと変じゃね?」
怪訝な顔をしながらとある兵士がつぶやくと周りからも声が上がる。
「まぁ、そういうなよ。多分子供のこと考えてるんだろ。隊長は超の付く親バカだからな。この間なんて娘に嫌われたって言いながら鬼のように魔物をぶち殺してたぞ。」
「あーそれ俺も見たわ。あれはヤバかったー。思ったんだけど将来娘さんをください。とか挨拶に行く奴は間違いなく死ぬね。」
「まぁ、隊長そこらへんにいる上位の魔物より強いし怖いからなー。それにしたって今日の隊長はないな。あれはないでしょ。どんだけうれしいことがあったんだよ!って感じだな。」
そんな感じの話をひそひそとする隊員たちなのでした。