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忍び寄るもの

あれからいくつかわかったことがある。


まず、自分の名前は『ビクトン』というらしい。


父は『アルフェイド』栗毛を短く切りそろえた精悍な顔つきのイケメンパパだったよ。抱っこされるとき余りにも大きな手が迫ってくるもんだから怖くてギャン泣きしてしまった。まだ幼いからかどうにも感情の起伏が激しいみたい。ちょっとしたことで心に感情の波紋ができてしまう。しかも振れ幅が大きくてこらえられないときた。おかげでパパはものすっごいへこんでた。泣く気はなかったんだけど、赤ん坊から見て大人はみんな巨人に見えちゃうんだよ…。怖いんだからしょうがないだろ?


ママは『リーフェ』清廉という言葉が似合うような整った顔立ちにプラチナブロンドの髪を腰まで伸ばしている美人さん。っつーか、でるとこでているナイスな感じ。ギャン泣きしているところを優しく包み込んでくれたし、なんというか落ち着く波動の出てる人だったよ。そのまま授乳してもらったんだけど日によって母乳って味が違うのな。本当に驚いたよ。ちょっと苦い日もあれば甘い日もあって、たまには薄い日もある。やっぱ人間だし一定の濃さや味なんて維持はできないよね。その日の体調や食べたものに影響されるみたいだし授乳は数少ない楽しみの一つだよ。


ちなみに変態とか思わないように!寝るか泣くかしかないんだから食事が楽しみになるのは当然だろ?そうそう数少ない楽しみといえば女神様とのおしゃべりもかな。あの女神様大抵仕事サボって無駄巨乳様に怒られてるしこの間なんて逆さに吊られてたみたいだしね。本当に映像の実装を早くしてもらいたい。吊られた女神様とか見てみたいよ。それでは、今日も女神様に連絡してみますか。わくわくするよね。吊られているか、はたまた正座か、それとも縛られているのかどうなってることやら。


“こんにちは、女神様。今、よろしいでしょうか?”


『あら、こんにちは。大丈夫よ。今日は何かしら?』


ふむ、珍しい。仕事サボってないのかな。大抵はサボってる宣言か怒られている宣言があるんだけどなー。今日は嵐かな、それとも雪かな。寒くなるようなら毛布増やしてもらうように頼まないと。まぁしゃべれないのだけれけど…。


“珍しいですね。真面目に仕事してるなんて。今日は名前がわかったのでご報告です。『ビクトン』これが私の名前です。ちゃんと覚えてくださいね!”


『ビクトンね。次からはそう呼ぶわ。それにしても失礼しちゃうわ。私は何時だって真面目に仕事をしているわ。今だってちゃんと仕事をこなしているもの。まぁ趣味と実益も兼ねているけれどね♪』


何時も真面目とか…、絶対ないなー。大抵無駄巨乳様に怒られているのに。それにしても趣味と実益を兼ねた仕事ってなんだろ?聞いてみるか。


“ちなみに何のお仕事をされているのでしょうか?”


『ふふ、あなたとの会話よ♪』


何を言ってるんだ?この女神様は?それは仕事ではないのでは?


“それ仕事ですか…?”


『そう、立派なお仕事よ。私の“初めての加護”を与えそして見守るようお願いされているのだから見守ることは当然のお仕事。だからサボってなどいないのよ。そうこれはお仕事なの!私の加護を与えた子を見守るというとても大切なお仕事なのよ!それにしてもあんなにギャン泣きしちゃって可愛いんだから。そんなにパパが怖かったの?それに比べママはそんなによかったのかなー?』


あかん。この女神様あかん。めっちゃ見てる。ものすっごい見られている。もしかしておしめ換えてるところとか見られてるの!?お婿に行けないじゃん!恥ずかしいんですけど!プライベートなところは見ないようにお願いしなくては!


“お願いですからプライベートなところは見ないでください…。お婿に行けなくなってしまいます…。”


『それは無理かなー。見守るのが仕事なわけだし。安心して見守られていなさい。無様なところも温かく見守ってあげるわ♪ところでママのお乳はおいしかった?授乳ってどんな感じなのか気になるところではあるのよね。』


駄目だ。女神様、サボる口実として俺を利用する気だ。お乳の味とか聞くなよ、恥ずかしい!授乳の感じが知りたきゃ勝手に試せ!!相手がいればだけどね、ぷぷっ。あーもう、無駄巨乳様に怒られればいいのに!


“授乳してみたいなら試したいいんじゃないですか。相手が居ればですけど!そんなことばかり言ってるとサボってるのと勘違いされて無駄巨乳様に怒られても知りませんからね。”


『安心なさい、相手なら居るわ。それとすでに怒られている最中なのよね。現在水車に括り付けられて水行中よ!そしていいことを教えてあげるわ。私とあなたとの会話は無駄巨乳様に筒抜けよ。電話方式だから周りにも聞こえるのよね。ごめんねー、言い忘れちゃった。てへぺろ♪』


おい、駄目な会話筒抜けって。それに無駄巨乳様って職業なんだっけ?戦乙女?あれ名前が無駄巨乳で職業戦乙女だっけ?思い出せ、俺やばいんじゃね?


――――――――、あっ、思い出した!!!戦乙女じゃん。無駄巨乳とか女神様がいってた悪口やん。やばい。死ぬ。っつーか、水車に括り付けられての水行ってなんだよ。拷問じゃん!ここは赤ん坊らしく寝てごまかそう!女神様から無駄巨乳様と聞いていることにすれば問題ないだろ。よし、そうと決まれば善は急げだ。


“女神様と一緒にいられる方、女神様からからそう呼ぶように聞いていたのですが違うようでしたら次回お話するときにでもどのようにお呼びしたらよいかお教えください。女神様、そろそろおねむの時間なのでこれで失礼いたします。水行ですが後10,000周ほど頑張ってくださいね♪”


『ビクトンーーー!戦乙女よ、なにうなずいているの?やめなさい。やめてちょうだい。さすがに10,000周は無理よ!お肌が死んじゃうわ!あっ、でもちょっと変な感じに…。』


切ろ。これ以上は精神衛生上良くないね。そういえば不吉なことも言ってた気もするけどいいか。とりあえず、寝てごまかそう。見られてるのは嫌だけどしょうがない。


あーくそっ。心なしか女性の悲鳴とも喜びの声ともつかないような抗議の声や何やら聞こえる気がする。ここはギャン泣きしてママにでも子守唄を歌ってもらおう。よし泣くぞ。今泣くぞ。すぐ泣くぞ。


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