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女神の説明と絶望の一端

おはようございます?それとも、こんばんは?これは夢なの?なにがどうなっているのかしら?


リーフェ・フォン・バルドフェルドは混乱の極みだった。思考は疑問で埋めつくされ彷徨う迷子のよう。


『なかなかの肌触りね!うーん、肌触りはほぼ同じかしら?重量感は悔しいけど私の負けね。形は私の圧勝といったところかしら。あらやっと起きたのね。ビクトンのママさん。』


リーフェを激しい混乱に陥れた本人は平然と声をかける。傍から見たら美女が美女を襲っていいるようにしか見えないこの状況でだ。具体的に言おう。まず女神がリーフェに馬乗りになっている。それだけならまだ良い。問題は女神の右手は己の胸に、左手はリーフェの胸を鷲掴みにしているのだ。しかも、声をかけつつも手は何かを確認するようにせわしなく動いているのだから最低だ。これでは寝込みを襲っている変態にしか見えない。威厳はまるでなくそこにいるのはただの変態。


「あの…、なにをしているのでしょう…?一応確認なのですが女神様ですよね…?」


リーフェは自信なさげに確認する。娘たちの時に教会の方からいろいろ話は聞いているし間違いなくこのお方は愛する息子ビクトンへ加護を与えてくれたであろう女神様だ。だが、状況がそれを認めることを許してくれないのだ。目覚めたら美女がひたすら胸を鷲掴みにしている。そんな変態を女神様だと息子に加護を与えてくれたお方だとは到底認められない。


そんなリーフェをおいてけぼりにし女神は突き進む。そして女神の一言により更に事態は悪化する。


『そうよ。なにを隠そう私がビクトンへ加護を与えた女神です!』


胸を張って答える変態。


『そんなことは置いといて、ちょっと味見していいかしら?やはり普段の食事を確認するのは重要だと思うの。万全な態勢で挑まねばあの子にも悪いでしょ?』


味見がしたい。そう伝えると当人の返答を待たず吸い出す女神様。なにをどうしているのかは割愛するするが、吸われている本人は驚きすぎて完全に思考が止まっている。気にせずぶつぶつと独り言を漏らしながら真剣に一生懸命に確認する変態。


『なるほど、ビクトンはこれを毎日飲んでいるのね!ありがと!かなり参考になったわ!』


そう言うと立ち上がりリーフェに手を差し伸べる。リーフェにした行為は最低以外の何物でもないが、それを誤魔化すかのように最高に綺麗な笑顔を浮かべながら立ち上がらせる。


「えっ、あの、なぜこのようなことを…?」


息子のことを思いこの変態を殴るのを堪え理由を問う。ここで怒りにまかせ魔法を叩き込んだところで勝てるはずもないし天罰のようなものをもらうわけにはいかないのだ。しかし、冷静な部分もあるが思考はいまだにめちゃくちゃな状態なのだ。


相手は女性の神様よ。そうよ!女神様なのよ。きっとこのお方は美の女神様で私にアドバイスをするためにこんなことをしたのよ。現状をきちんと確認しなければアドバイスなんてできないものね!そうよ…。息子に加護を与えた方が変態だなんて…。


『えっとね、7日後にビクトンに授乳と抱っこと子守唄を歌いに行くから事前確認みたいなものよ。そうそう、あともう1柱一緒に行くわ。どっちがより上手にできるか勝負するの。ふふ、その子もビクトンに加護を与えたのよ。私たちの初めて加護を与えたから目一杯可愛がるわ!安心してちょうだい!私もその子もなかなかの高位神なんだから!』


打ちひしがれるリーフェ。今すぐにでも地面に両手を着いて絶望したいのを必死にこらえる。


もう絶望だわ!変態の高位神が息子に目を付けているなんて…。それも2柱も!!今この場でこの女神だけでもやらなければならないわ!おそらく息子の人生において最大の危機よ!


そんな事を思い目の前にいる女神を亡きものにしようと考えをめぐらしていると女神が嬉しそうに声をかけてくる。


『それと、ビクトンのパパにはもう1柱が説明に行ってるから安心してね!じゃ、今日はありがとう!おかげで私の勝利は決まったわ!』


そう言って何かを唱える女神。


リーフェの意思とは裏腹に視界は歪み意識は薄らいでいく。


最後に見たのはとても美しい笑顔。


そして抱くのは恐怖。


どこまでも純粋で穢れのない笑顔。それは人が理解できるものではないものだ。


度が過ぎたものはすべからく毒になる。物事には容量があるのだ。超えてしまった毒はやがて心を蝕み恐怖となる。最後に見たのはそういった類のもの。その笑顔は見てはいけない。美しさに囚われてはならない。この女神には決して関わってはならない。そうあの物語のように関われば結末は常に同じになるのだから。



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