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童話シリーズ

お爺さんが大好きだった猫の話。

昔々、ある所に小さな黒猫がいました。

黒猫は縁起が悪いとして沢山の人に邪険にされながら暮らしていました。

一日の餌も碌に食べることはできません。

それでも、猫は一生懸命毎日を生きていました。

お友達の白い犬もいつかきっと幸せに暮らせるよと言って励ましてくれました。

猫はお礼を言って、それでもその言葉を上手に信じられなかったのです。


今日も猫はお腹をすかせてふらふらになっていました。

そうしてもう一歩も歩けないとなった所で運悪く、雨も降ってきました。

もうこのまま終わってしまうのかも知れなと霞んできた視界の中で猫は思いました。

冷え切ってきた体の中で猫はどうしようもなく、一人ぼっちでした。


猫が目を覚ますとフワフワのクッションに囲まれていました。

ここは何処だろうときょろきょろとあたりを見回すと見知らぬお爺さんがいました。

冷え切っていた体はすっかり温められ、たっぷりとした水と餌が用意されていました。

猫はこのお爺さんが自分の事を助けてくれた事を知りました。


お爺さんは偏屈で人嫌いだったので、1人ぼっちで暮らしていました。

それでも猫にはいつでも温かいご主人さまでした。

黒猫は彼に飼われることになったのです。

猫は人間に散々酷い目にあわされてきましたから初めは信用しませんでした。

それでも彼も自分と同じように人間から距離を置いていることが分かると、

この人は種族は違うけれど自分と同じなんだと思うようになりました。


猫とお爺さんは、

春の季節は綺麗な花を楽しみ、

夏の季節は一緒にその暑さを嘆き、

秋の季節は鮮やかな紅葉を眺め、

冬の季節は一緒に体を暖めあう事で寒さから逃れました。


二人はとても仲良しで幸せに暮らしました。

けれども、そんな生活は長続きしなかったのです。


ある時、お爺さんが風邪を拗らせて病院に行ったまま帰って来なくなったのです。

猫はお爺さんがすぐに帰ってくると言ったのを信じて待ち続けました。

やがて、飲まず食わずで倒れてしまうまでお爺さんの事を待ち続けました。


次に起きた時、猫は知らない人の家にいました。

自分にもしもの事があったらとお爺さんが親戚に頼んでいたのです。

けれども猫にはそんなことは分かりません。

ここではお爺さんを待っていても会えなくなってしまうと大層困りました。

そうして、とうとう僅かに開いていた窓の隙間から逃げ出してしまったのです。


猫はお爺さんを待つだけじゃ駄目だと思って、人間の子供の姿になりました。

一生に一回だけ人の姿になれる特別な黒猫だったのです。

猫はどうしてもお爺さんに会いたかったのでその貴重な一回を使いました。

お爺さんに自分から会いに行こうと思ったからです。

そうして、お爺さんの家の近くに行くと聞き込みを開始しました。


1人目のお婆さんはお爺さんの行方は知らないと言いました。

2人目の子供は何だか病気で倒れたらしいけれど、その後は知らないと言いました。

3人目の人の良さそうなおばさんは困った顔をして彼は亡くなったのよと言いました。


猫は、なくなる?と言って首をかしげました。

何の事だか分らなかったのです。


おばさんは更に困った顔をしました。

そうして、お空の上に登ったと言う事よと言って、悲しそうな瞳で猫の頭をなでました。


猫は困りました。

お爺さんに会うにはお空の上に登らなくてはいけません。

暫くうんうんと考え、やがて思いつきました。


猫は町で一番高い建物のてっぺんに行くと思い切って飛びおりました。

空を飛ぶことが出来たら、お爺さんに会う事が出来るかも知れないと思ったからです。


そうして、猫はきちんとお爺さんに会うことができました。

お爺さんはこんな所まで自分の事を追い掛けて来てしまったのかと悲しみました。

それでも優しく頭を撫でてくれたので、猫は幸せでした。











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― 新着の感想 ―
[一言] 猫の気持ちを思うと、当然の行為だと思います。 でも、おじいさんからするとすっごく切ないですよね。 ここまで追いかけてくるなんて。 可愛くて仕方がないんじゃないんでしょうか? 私は犬でも猫でも…
2015/06/21 13:19 退会済み
管理
[一言] つい日頃「死ぬ程」なんて言葉を簡単に使ってしまうことがあります。 このお話を読むと、 そんな風に言葉を使うのが申し訳なくなりますね。 強い想いは、時に命にも勝ってしまうのかもしれない。 …
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