七話「 小佐鬼剣閣&成瀬二葉 」
180センチもありそうな高身長、爽やかすぎる顔立ち、スポーツマンのようなヘアースタイル、三年生を表す赤いネクタイ。この人は剣道部部長の小佐鬼剣閣先輩だ。
「小佐鬼先輩こんなところで何してるんですか!?」
「あぁ、やっぱりばれちゃったか。昨日君がきた時は随分冷や汗ものだったんだよね。」
今の発言で理解した、小佐鬼先輩は間違ってここに来たのではなく、この新遊部たるものの一員だという事を。って言か先輩、部活はどうしたんですか?部長でしょう?
「はは、今期の部長は辞退したんだよ。なるべくこちらを優先させたかったから。」
その言葉聞いて俺は呆れかえった。剣道で先輩に勝てる奴は誰もいない。この二年間で全勝無敗の記録を残している。実家も剣道場で父親が四代目師範を務めているらしい。天才肌をもつ先輩が部活に参加しなくても大会では成果を発揮してくれる。そのため練習に出なくても誰も文句は言わないのだろう。でもその理由がまさかこんなくだらない仮部活への参加だったなんて。
「まぁ、こっちにも色々と事情があるんだよ。」
俺をなだめるように肩をたたく先輩はどこか様子がおかしいようにも見えた。ただの気のせいかもしれないが。
これでこの部屋にいるのは三人、残るは二人、重松茂美ともう一人の女生徒になる。コーヒーを飲んでる朝比奈大斗がこちらを見ると
「そんなに気になるのか?。」
そう言うと視線を俺から小佐鬼先輩にずらした。先輩はそのアイコンタクトを理解するように天井を見上げた。
「おーい、二葉さん居るんでしょ?。出てきてくれませんかー?。」
俺も先輩につられて天井を見上げたが特に変わった事はない。だがしばらくすると天井がガタガタと揺れてパネルが外れると一人の女生徒が飛び降りて現れたのだ。驚くあまり俺は天井と彼女を何度も往復して確認した。何なんだ一体、ここはからくり屋敷か?
「まぁ、彼女はこれが普通だから許してやってくれ。」
普通?これが?。
先輩は降りてきた女生徒に話しかけると彼女は何回かうなずく動作をみせた、その後俺の前まで来た。どうやら挨拶するよう言われたらしい。
天井から降りてきた彼女の制服の首元には赤いリボン、先輩と同じ三年生だ。女性にしては背は高い方で、艶のある長い黒髪をポニーテールのように縛っている。切れ目で凛とした表情で仁王立ちしている姿は少し委員長に似てる雰囲気だった。
「先程、剣閣様より紹介いたした拙者が、成瀬二葉で御座る。今後ともよろしく頼もう。」
ん?…皆さんお気づきだろうか?。それとも彼女の言葉使いに関して疑問を思ったのは俺だけだろうか。他の三人はあたかも普通のごとくスルーしているので俺が変なのかという錯覚に一瞬襲われた。
これは後で分かった事だが、成瀬先輩の実家は代々忍者の家計で、今は普通の生活がしたくて一人暮らしの抜け忍生活をしているらしい。嘘か本当か分からないが俺には確かめるすべがない。
まぁ何はともあれ、これで部長を除くメンバーが揃ったわけだ。
お嬢様:咲野 桜花 (さくの おうか)
不良?:朝比奈 大斗 (あさひな たいと)
剣道最強:小佐鬼 剣閣 (おさき けんかく)
抜け忍?:成瀬 二葉 (なるせ ふたば)
そしてこれから来ると思われるここのリーダー:重松 茂美 (しげまつ しげみ)
この個性の塊しかないような5人が非公認部活、新遊部のメンバーだ。
これから俺はこの五人に高校生活を壊されていくのだ。でもその時の俺はまだその事を知らない。