表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

六話「 咲野桜花&朝比奈大斗 」


新遊部の部屋で待っていること数十分、誰にもいない部屋に最初に現れたのはブルジョア系お嬢様風の女生徒だった。制服の青いリボンは俺と同じ二年生。おそらく迷子だろう。


「こんにちわ。昨日はお恥ずかしいところをお見せしてしまいましたね。」


その言葉を聞いた瞬間俺は固まった、あるいは世界が停止した。こんな大人しそうな人が新遊部の一員のはずがない。もしそれが本当ならこちらを見て微笑む女生徒は昨日、重松(しげまつ)の後ろにいた四人のうちの一人になる。


「自己紹介がまだでしたよね。私の名前は咲野桜花(さくのおうか)と言います。どうぞお見知りおきを。」


綺麗な桜色の髪をなびかせる豊満(ほうまん)で礼儀正しい彼女はとても重松茂美(しげまつしげみ)と関わっているようには見えない。相手がお辞儀するとついこちらもお辞儀をしてしまう。でも一つ安心した、新遊部にもマトモな人がいてくれた。

彼女は自分の持っている鞄を机に置いた。どうやら長机に置いてある鞄は別の人物のモノらしい。鞄を置くとイスに座る事なく部屋の奥に行き何かの準備を始めている。


「なにかお飲み物をお入れいたしましょうか、紅茶やコーヒーしかありませんけど。」


振り向く彼女の手元にはティーカップなどの品々である。学校だよな?ここ。一応断るのも失礼だと思い、コーヒーを頼む事にした。お湯を沸騰させる音を聞きながら窓の外を眺めていると、足音と共にまた扉が開いた。


「ういっす。ってまだ一人かよ…。」


男子生徒だった。でも俺の第一印象はとても良いものとは思えなかった。黒いバンダナを頭にまいた金髪の少年、俺と同じ青いネクタイを鞄に突っ込んである。どうみても不良だろう。俺がそんな事を思っていると相手が俺に気がついた。


「あぁ、昨日の……ちっす。」


軽く会釈するように頭を向けると彼はすぐに俺の向かいの席に座った。


大斗(たいと)君、ちゃんと挨拶しないと。一宮(かずみや)さん、こちらは朝比奈大斗(あさひなたいと)君と言います。人見知りな方ですので何かあっても気になさらないで下さい。」


俺の目の前にコーヒーカップを持ってきてくれた咲野(さくの)さんが本人の代わりに自己紹介をしてくれた。


「咲野、俺にもコーヒーくれ。」


「はい、わかりました。」


彼、朝比奈大斗(あさひなたいと)はそう言うと咲野さんは言う通りにコーヒーを作りに行った。俺の手元にきたのはブラックのコーヒー、匂いは好きだがあまり飲んだ事がない。少し大人ぶってしまったのがあだとなったか。少し我慢して飲もうとティーカップに手をかけた時、カップの受け皿の横に小さな瓶に入ったミルクと砂糖が置かれた。

誰が置いたのか顔をあげると、先程までこちらに無関心だった朝比奈大斗だった。


「無理するなよ、俺も苦いのは苦手だ。」


そう言うとまた黙って席に戻った。この人は不器用なだけで意外といい人かもしれないと少し思ってしまった。そして彼の好意に甘えてコーヒーにミルクを入れて飲む事にした。


そんなこんなして時間が過ぎるとまた部屋の扉が開いた。


「いやぁ、遅れてごめん。担任との会話が長引いちゃって。」


そう言って部屋に入ってくる男子生徒を見た瞬間、飲んでたコーヒーを全て吹き出すようにむせかえった。なぜなら俺はその人を知っているからだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ