第五章‐1
「『魔神の掌』!」
非常扉を開け放つのと同時に、アッシュはちょうど開いたその非常口を覆うような形で、強固な影色の防御魔法陣を展開する。開け放たれた非常口に向けて展望台内からテロリストたちが発砲してくるが、撃ち込まれる銃弾の雨は彼らの前でことごとくその防御魔法陣に弾かれていった。
「『茨の冠』、三連!」
アッシュは、目に付く範囲にいるテロリストを対象に、多重処理で拘束魔法を起動する。非常口から見える位置で発砲していた三人のテロリストが、影色の光輪に拘束された。非常口に撃ち込まれる銃弾の雨が弱まる。
「『ライトニング・ボルト』!」
アッシュとは逆側の非常口の陰にしゃがみ込んでいるエリカ=デ・ラ・メア=ブラウスパーダ少尉が、珍しく射撃魔法を起動して、防御魔法陣の陰から、拘束されたテロリストの一人を狙い撃った。だが、やはり使い慣れないせいか、黄金色の光弾は外れはしなかったものの、そのテロリストの胴体に当たる。あれではスタンさせられないだろう、とアッシュは思ったのだが、その光弾を食らったテロリストは身体を痙攣させると、ガクリと首を垂れて動かなくなってしまった。それを見てアッシュは、先日の事件でエリカと戦ったときに身を持って知った、彼女の魔力特性を思い出す。
「……そうか。『電撃付与』……!」
エリカの魔力特性、『電撃付与』によって、その魔力弾は電撃属性を帯びていたのだ。『電撃付与』の特性を最大限に引き出すようにカスタマイズされたその魔力弾は、命中した相手に痛みと衝撃と共に強力な電撃を流す。
「はい。私の隠し技の一つです。『ライトニング・ボルト』!」
そう答えて、エリカはさらにもう一人のテロリストの腹に光弾を命中させ、その電撃で気絶させた。それを見て、彼女ばかりに任せておくわけにはいかないと、アッシュも多重処理で射撃魔法を起動する。
「『凶弾の狩人』、ヘッドショット!」
その光弾は狙い過たず、三人目のテロリストの頭を撃ち抜き、気絶させた。
「よし。この調子でどんどん――」
アッシュがそう言いかける。だが、そのとき、非常口から離れたところにいるテロリストの声が掛かった。
「貴様ら! 抵抗をやめて出て来い! さもないと――」
『魔神の掌』を維持したまま、アッシュとエリカは非常口の陰からそっと頭を出して、そちらの様子を窺ってみる。すると、あの最前アッシュを殴った、やけに落ち着きのないテロリストが、人質の中からチッピィを抱いた女の子を引きずり出して抱え上げ、その頭に銃を突き付けたところだった。母親の元から引き離され、知らない人間に抱え込まれて、その女の子が泣き出す。
「――こいつの命はないぞ!」
「ヤロウ! また、子供に銃を……!」
アッシュが、ギリリと歯軋りした。エリカも唇を噛むが、なんとか自制し、彼の背に手を当てて言う。
「落ち着いて下さい、アッシュ。無策に飛び出すわけには参りません」
「……ああ、わかってるよ……!」
そう答えてはいるものの、アッシュ一人だったら、まず確実に後先考えずに飛び出していたことだろう。こういう場面でのエリカの、訓練された軍人の冷静な判断力には何度も助けられている。
しかし、なんとか策を弄して、あのテロリストから捕まえられた女の子を救い出さねばならないわけだが、二人の隠れている非常口からでは、集められた人質たちの向こうに立つそのテロリストまでは、ちょうど展望台を四分の一周した程度離れており、なにをするにしても距離があり過ぎる。アッシュの精密射撃は、あくまでもFPSゲームで鍛えた近接狙撃――近接格闘の距離で動きまわる相手の急所を狙い撃つ為の技だ。遠距離の本格的な狙撃には慣れていない。如何に相手が止まっているとはいえ、これだけの距離があっては、そのテロリストの頭部を正確に狙い撃って昏倒させるのは至難の業だった。エリカの射撃では、なおさら狙いが不正確で、テロリストに抱えられた女の子に当たりかねない。アッシュの得意とする拘束魔法でそのテロリストを無力化しようとしたら、テロリストが抱えた女の子ごと縛り上げてしまうことになるだろう。そもそも、彼らがなんらかの抵抗を見せた時点で、今、銃を突き付けられている女の子は助けられるかもしれないが、他のテロリストがその他の人質に危害を加えないという保証はない。だが、だからといって、おとなしく投降しても、事態は悪化するだけだ。投降すれば、よくても彼らは厳重に拘束、監視されることになるだろうし、最悪の場合、その場で殺されかねない。そうなれば時限爆弾の起爆を止めることが出来なくなってしまう。選択の余地はなかった。今、捕まっている女の子を助けるのと同時に、その他の人質の安全も確保するように行動しなければならない。悠長に構えているほどの時間の猶予もなかった。女の子に銃を突き付けている、あの落ち着きのないテロリストが痺れを切らす前に、行動を起こさねばならないだろう。
「エリカ、あいつの後ろに転移して切り倒してくれないか? その間に、俺が飛んでいって、人質全員を――」
アッシュが作戦を説明しかけるが、それを響いてきた悲鳴が遮る。反射的に、非常口の陰から頭を出すと、捕まった女の子の母親が、必死で娘を取り返そうとテロリストに縋りついて、蹴り飛ばされたところだった。
「このっ!」
瞬間的に頭に血が上ったアッシュが飛び出しかけたそのとき、テロリストに抱えられて銃を突き付けられている女の子に抱かれていたチッピィがその腕から抜け出して、ストンと床に着地する。
(アッシュ、言った)
チッピィが一声吠えると、その前に一発の光弾が出現した。
(チッピィ、遠慮、ない、ぶちかます!)
至近距離から打ち上げるような角度で光弾が発射され、女の子を抱えたテロリストの顎に、さながらボクシングのアッパーカットのように直撃する。安全装置の掛かっていない魔力弾の一撃を顔面に受けたそのテロリストは顎の骨を折られ、気絶して仰向けにバッタリと倒れ込んだ。捕まっていた女の子も、その腕に抱えられたまま一緒に床に転がる。すぐさま、母親が這い寄って彼女を奪い返し、抱き締めた。
「ナイスだ、チッピィ!」
それを見てすかさず、アッシュが『魔神の掌』を解除し、『黒鉄の城砦』の防御魔法陣で銃弾を防ぎながら、非常口から展望台内部に飛び込む。テロリストたちが予想もしていなかったであろう伏兵のチッピィが女の子を救ってくれたこの隙に、人質全員の安全を確保するのだ。ほんの少しの猶予もなかった。テロリストたちが他の人質に手を出そうと思い至る前に、全てを終わらせなければならない。
「エリカ! さっきの手筈通り、人質の周りのテロリストどもを頼む!」
「はい!」
先に飛び出したアッシュからテロリストたちの眼を逸らさせ、人質たちを見張るテロリストたちを引き付ける為、エリカも常駐魔法の防御魔法陣を展開して、銃弾を弾きながら展望台内部に飛び込んだ。
「なんだ、この犬!? 魔法を使うぞ!?」
「なんでもいい! 構わん、撃ち殺せ!」
チッピィの近くにいたテロリストたちが口々に言って、銃を構える。母親が悲鳴を上げ、女の子を抱いて、出来るだけ身体を小さくしようと床にうずくまった。チッピィが、その二人の前に四肢を踏ん張って立ちはだかる。テロリストたちが一斉に発砲を始めた。チッピィは防御魔法陣を展開して、それらの銃弾を防ぎ止める。アッシュとエリカは、テロリストたちからの銃撃に晒されているチッピィの援護に向かいたかったが、そこは彼らの飛び込んだ非常口からは展望台を四分の一周するほど離れている上、二百余人の人質たちを挟んでちょうど反対側になっていた。他の人質たちの安全を考えれば、その人質たちの真ん中を突っ切っていくわけにもいかない。その為、容易には辿り着けそうになかった。二人は、結局は当初の作戦を遂行することが彼に対する援護にもなるだろうと素早く判断して、一瞬視線を交し合って互いの意思を確認すると、二手に分かれる。
「『ライトニング・サーベル』!」
エリカは飛行魔法で、人質たちを見張っていたテロリストの一人に疾風のように接近し、光剣で稲妻のような突きを放って昏倒させた。チッピィのほうに気を取られていたその他の人質たちを見張っていたテロリストたちが、彼女目掛けて発砲し始める。エリカはそれほど広くない展望台内部の空間をいっぱいに使って戦闘機動を繰り広げ、テロリストたちに狙いを定めさせない。彼女に銃弾を当てられないことに業を煮やしたテロリストたちが、ジリジリと前に引きずり出されてきた。
その隙に、アッシュは低空飛行でテロリストたちの注意を引かないようにしながら、人質たちの傍へ移動する。この一箇所に固まっている人質たちと彼らを見張っていたテロリストたちとの今の位置関係を把握したいが、空間認識はあまり得意ではない。アッシュはそこから天井付近まで垂直に上昇し、俯瞰で人質たちと見張りのテロリストたちの位置関係を確認した。エリカが、見張りをしていたはずのテロリストたちを、上手く人質たちの座っている場所から引き離してくれている。これならば問題ないだろう。アッシュは右手を人質たちのほうへ向け、コマンドを唱えた。
「『森緑の揺籃』!」
伸ばした右手の先に、半球形の抗魔法、耐物理結界が展開する。張り巡らされた結界は、少し離れたところにいた女の子と母親を除いた、人質二百余人全員を包み込んだ。エリカによって人質たちから引き離されていた見張りのテロリストたちが、慌てて振り返って結界に取り付き、その結界壁を叩いたり銃弾を浴びせ掛けたりするが、カスタマイズをしていない市販のままの結界といえども、さすがにその程度のことではびくともしない。この結界魔法は、敵を閉じ込める為のものではなく、対象者を保護する為のものだった。結界壁の外側は強固に、内側はさながらクッションのように柔らかく出来ている。昨日買ったばかりの魔法の一つだ。アッシュは、昨夜のうちに、すぐに使えるように起動のコマンドとなるオブジェクト名の変更を済ませておいてよかった、と頭の片隅で思う。
(保護する為の結界か。この発想はなかったな……)
これだから、他人が作った魔法を見るのは面白い。
(あとは、あの子と母親を――!)
アッシュは、今張った結界を挟んで反対側に位置する女の子と母親、それにチッピィのところへ向かおうと、結界を回り込むように飛び越えようとする。
アッシュが人質たちを守る結界を張ったことを確認して、エリカは、セントラルピラー基部の外側で待機しているはずのテロ対策部隊にいるアマーリアに念話で通信した。
(アマーリア! 人質の安全は確保しました! 突入して下さい!)
間髪入れずに返事がくる。
(わかりましたわ! 既に突入を開始していましてよ! 貴女も、それ以上、無茶はしないようになさいな! すぐにそちらに参りますから、貴女自身の安全も確保して、待っているのですわよ!)
アマーリア=ウィルナー=クァトロロッソ=ロスロレンツィ少尉からの返事は、予想外だった。だがそれは、いい意味で、だ。突入を開始したテロ対策部隊への対応に追われて、地上にいるテロリストたちには、この展望台へ増援を送り込むような余裕はないだろう。ということは、自分たちは今この展望台内部にいるテロリストだけを相手にすればいいことになる。それがわかっているというのはありがたい。彼女の返事に、エリカは不敵な微笑みを浮かべて、言葉を返す。
(私自身の安全の確保は努力致しましょう。それよりも、そちらは展望台へ突入して武装集団を取り押さえることより、セントラルピラー外部の魔人兵を排除して爆発物の解体を行うことを優先させて下さい!)
(念を押されなくとも、その辺りの優先順位は間違えませんわよ。人質の安全が保証されたのならば、隊の最優先目標は爆発物の除去ですわ!)
(はい。それで結構です)
(けれど、私としては、貴女を見捨てるつもりもなくてよ! 平行して展望台への突入も行いますから、無理せず待っていらっしゃい!)
アマーリアの言い分は、強欲な彼女らしかった。エリカは思わず笑みを浮かべてしまう。余裕があるように見えるが、先ほどから撃ち込まれ続けている銃弾を防御魔法陣で弾き続けていている。防御魔法陣は展開しっぱなしだ。エリカは思い切って、防御魔法陣で銃弾を弾きながら、発砲するテロリストたちの中へ一気に飛び込む。テロリストたちは同士討ちを恐れて、一瞬、彼女を狙うことが出来なくなった。エリカは狙いを定められないように、テロリストたちの間を彼らを盾にしながら飛び回り、攻撃を仕掛けて撹乱する。銃では彼女を狙えないと判断して、テロリストたちの中にいた魔法使いが二人、銃を捨てて、光剣をその手に発生させて飛び出してきた。エリカも、それを迎え撃つべく、光剣を構え直す。剣での近接戦ならば、彼女の望むところだ。
その一方、その小さな身体を活かし、前面に展開した防御魔法陣で、撃ち込まれる銃弾をことごとく防いでいたチッピィだったが、一発の銃弾が床で跳弾して防御魔法陣の隙間をすり抜け、その右前肢に当たってしまった。キャンッと一声苦鳴を上げて、倒れ込むチッピィ。仕留めたと見たのか、テロリストたちの射撃が止んだ。
「チッピィ!?」
アッシュが、人質たちを守る結界を飛び越えて、そちらに急行しながら叫ぶ。チッピィはよろよろと、被弾した肢を引きずりながら立ち上がった。
(チッピィ、強い……。チッピィ、平気……)
チッピィが再び吠えると、その前に十発ほどの光弾が出現する。
(チッピィ、遠慮、ない、ぶちかます……!)
発射された安全装置の掛かっていない光弾の弾幕がテロリストたちに襲い掛かり、さらに二人のテロリストを打ち倒した。慌ててテロリストたちが発砲を再開する。右前肢を引きずりながら、チッピィはうずくまる母子の前に立ちはだかり、防御魔法陣を展開して、それらの銃弾を防いだ。
「チッピィ、もういい! 休んでろ! 『魔神の掌』!!」
アッシュのそのコマンドに呼応し、直径三メートルほどの影色の防御魔法陣が、チッピィとその後ろでうずくまった母子を庇うように展開する。それを見て安心したのか、チッピィは力尽きたように、またパタリと倒れてしまった。一方、娘を抱え込むようにしてうずくまっていた母親のほうは、銃弾が飛んでこなくなったことを確認して、娘を抱きかかえたまま恐る恐る身体を起こす。撃ち込まれる銃弾の雨を防ぐ防御魔法陣の内側に飛び込んで、アッシュはチッピィを抱き上げた。チッピィは苦しげに舌を出して息をしながら、弱々しくアッシュの顔を見上げてくる。アッシュは謝罪の言葉を口にした。
「済まん、チッピィ。俺が変な命令したばっかりに……」
バフスクは非常に忠誠心が強く、自らが主人と認めた者の命令は絶対に守ろうとする。軽い思い付きのようなアッシュの言葉でも、チッピィはそれを忠実に実行してしまうのだ。その結果がこれだった。アッシュは後悔する。余計なことは言わずに、待機を命じておけばよかったのだ。
(チッピィ、強い……)
「ああ。おまえは強いな」
弱々しいチッピィの言葉が、念話で届く。アッシュは安心させるようにそれに応じながら、彼の被弾箇所を確認してみた。出血はそれほど酷くないが、跳弾だったせいで弾速が減じていたのか、銃弾が貫通していない。アッシュは心の中で舌打ちをする。彼の持つ治療魔法では、銃弾を取り出して傷口を塞ぐなどという高度な治療は出来なかった。せいぜいが、痛みを和らげ、出血を抑える程度だ。しかし、その程度の魔法でも、治療に数十秒程度の時間が掛かる。アッシュは、優先順位を間違えてはいけない、と自分に言い聞かせた。チッピィの怪我は、今すぐ命に関わるようなものではない。一方、今、アッシュの後ろでは、飛び出した彼を援護する為に、エリカがテロリストたちの中に飛び込んで撹乱してくれている。チッピィの痛み止めの為に数十秒を費やしている間に彼女までもが被弾したら、きっとアッシュは自分を許せないだろう。アッシュは歯を食いしばって冷徹な自分を呼び起こすと、チッピィの治療を後回しにすることを決断する。
「ごめんな、チッピィ。痛いだろうけど、暫く我慢しててくれ」
(チッピィ、平気……)
「ああ。こんなやつら、あっという間に片付けてやるから、そしたら、すぐサーニャに治療してもらおうな」
弱々しく念話で言ってくるチッピィに、アッシュはそう言い聞かせると、母親に抱かれて泣き止んでいた女の子に向かって、彼を差し出した。
「少しの間、この子を頼む。その代わり、お嬢ちゃんたちのことは絶対にお兄ちゃんが守ってあげるから」
女の子はこくりと頷くと、チッピィを受け取り、抱きかかえる。
その間に、発砲を続けながらジワリジワリと彼らのほうへ近付いて来ていたテロリストたちに向かって、アッシュは右手を大きく振るって多重処理で牽制の弾幕を張った。
「『凶弾の狩人』、十二発、シュート!」
ろくに狙いも付けずに、広範囲に拡散するように射出した光弾が乱れ飛び、前に出て来ていたテロリストたちが右往左往する。
「下がりやがれ! 『凶弾の狩人』、十二発、シュート!」
今度はテロリストたちの足元目掛けて弾幕を撃ち込んだ。テロリストたちが慌てて下がり、売店や柱などの障害物の後ろに退避する。その隙に、アッシュは魔装機の操作端末を開くと、自分で張った結界である『森緑の揺籃』の構造式を素早く改変して、人が通れるほどの大きさの穴を開けた。撃ち込まれ続けている銃弾の雨を、『魔神の掌』の防御魔法陣で防ぎながら、母子を誘導してその穴から結界の中へと退避させる。すぐに構造式を修正して、結界の穴を塞いだ。チッピィと母子を結界内に退避させ、後顧の憂いがなくなったアッシュは『魔神の掌』を消して、こちらに向かって発砲を続けているテロリストたちに向き直る。自分一人ならば、常駐魔法である『黒鉄の城砦』の防御魔法陣で十分だ。銃弾を弾きながら、怒りに任せてテロリストたちに向かって行こうとする。そのとき、頭の片隅にいた冷静な自分がある考えを思い付いたので、結界から離れる前に昨日買ったばかりの魔法を起動してみた。こんなこともあろうかと、昨日買った魔法は全て昨夜のうちに、起動のコマンドとなるオブジェクト名の変更を済ませて、すぐに使えるようにしてある。
(こんなこともあろうかと、か。面倒臭がって後回しにせずに、やっておいてよかったな)
「『法王の結界』!」
一瞬、『森緑の揺籃』の外壁付近で、影色の魔法陣が閃いた。アッシュは、この結界を解除しに来る者がいるだろうということを予測して、トラップとして使う設置型の拘束魔法をそこに仕掛けたのだ。これで準備は万端だった。アッシュは今度こそ、テロリストたちのほうへ向かって歩き出す。
「……さぁ、覚悟しろよ、テロリストども!」
激しい怒りに瞳を燃え上がらせたアッシュは、『黒鉄の城砦』の防御魔法陣で銃弾を弾きながら、最初の標的を求めて視線を巡らせた。




