人材集め編の補足
「初心者向けネット架空戦記の書き方」今回は人材確保編。
これについては、「領地経営領主必見!どんな人材を雇えばいいのか?」http://ncode.syosetu.com/n3817bl/ なんてのを出しているのでその補足となる。あとがきに全文のせる予定。
ここでは、初心者が手を出したらいけない派閥の話をする。
人間集まれば派閥ができるのだが、初心者はこの派閥については絶対に手を出さない事。
どうしてかというと、味方どうしでも争う事があるから。
話を盛り上げる代わりに確実に主人公の足を引っ張るのだ。
特に、戦国時代の大名は就任条件が派閥闘争に打ち勝つ事と言わんばかりに、謀反だの粛清だののオンパレードである。
これを書き出すと間違いなく話が終わらないのと、主人公が確実に人間不信になる。
一つの例として、九州の戦国大名である大友宗麟の騒動を軽くまとめてみよう。
まず、父親大友義鑑と弟塩市丸が殺された大友二階崩れ。
この時に殺された、小佐井大和守、斎藤長実、津久見美作、田口鑑親を殺したとされる入田親誠は大友宗麟の守役(後見人&爺ポジション)で、入田を殺したのが斎藤長実の息子鎮実と入田の娘を嫁にもらっていた戸次鑑連。
さらに、この二階崩れに際して肥後菊池家に養子に行っていた叔父の菊池義武が謀反。
その鎮圧に功績があった小原鑑元は後に乱を起こして滅亡。
小原鑑元を討ったのは、高橋鑑種で、彼の父親だった一万田鑑相は大友二階崩れで宗麟擁立の立役者だが、小原鑑元との権力争いに敗れて粛清されている。
で、その高橋鑑種はよりにもよって、大友同紋衆(一門衆)の立花鑑載と組んで毛利家に内通。
謀反を起こして北部九州大乱のきっかけとなる始末。
とどめに、毛利とは弟大内義長を見殺しにして和議が成立していたというおまけつき。
これだけ身内がやらかしたら人間不信の果てに神にすがる訳だ。うん。
さて、大友宗麟の例は少し度が過ぎているかもしれないが、大なり小なり、戦国時代ではこんなのが当たり前だったというのが救われない。
織田信長は謀反を起こした弟信行を殺しているし、武田信玄は父親信虎を追放し、息子義信を粛清している。
派閥争いとそれがからむお家騒動は初心者だとまず理解不能だ。
『領地経営領主必見!どんな人材を雇えばいいのか?』では、人材を『水戸黄門』や『暴れん坊将軍』でたとえたが、彼らは主君を裏切らないし、主君も信頼している。
そんな関係で物語を進めたほうが初心者はまず間違いがない。
物語は完結させてこそ、はじめて評価がでるものなのだ。
書き終わって、自分が初心者でないと自覚できたならば、次にこの派閥争いに目を向けてみよう。
その欲と業と資料の深みに溺れなければ、あなたの前に垂涎の物語が姿を現すだろう。
人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり ――武田信玄――
小説家になろうにも領地経営系が増えて嬉しい限り。
さらに増える事を願って、新たな領主になる際に必要な家臣団の形成についてなんとなくつぶやいてみる。
実は、その解答を多くの読者は知っていたりする。
あの国民的時代劇がその解答である。
『水戸黄門』と『暴れん坊将軍』。
この二つ、モデルが徳川光圀と徳川吉宗という実在の君主だった事もあって、配役がちゃんと日本的領主経営に合うように割り振られている。
この二つをモデルにしながら、語っていきたいと思う。
爺・侍女 最初に『与えられる』家臣達
転生系ならば必然的に赤子からスタートする訳で、その時から必ず傅役という形で付き人がつけられる。
彼らが新米領主の最初の手駒となる最初の家臣達だ。
暴れん坊将軍でいう所の加納五郎左衛門こと、加納久通がこれにあたる。
彼らの能力については任命された時点で才があると言っているようなもの。
才が無くとも、家臣団の要石として要所できちっと家臣団をまとめてくれるので心配はしなくていい。
ここで注意しておかないといけないのは、彼らの忠誠度。
何しろ付けられた時は前領主が健在だから、付き人であると同時に監視役も兼ねている事もある。
それが、忠臣と化けるのは長い時間を共にいて互いが運命共同体であると認識するからにほかならない。
なお、彼らを切り捨てるというのは後ろ盾を失うという事でもあり、その後の権威確立にものすごく苦労する。
私が自サイトで展開している作品の父親とななっている大友義鎮(宗麟)なんて、大友二階崩れという大騒動の果に父親大友義鑑と傅役入田親誠を同時に失い、その権威確立に物凄く苦労している。
おまけに、子の入田義実はそれを恨みに島津家の豊後侵攻時に島津に寝返る始末(これについては諸説ある)。
実務内政官 書類仕事はまかせろー
官僚は必要です。自分が働きなくないのならば。
領主がしなければならない仕事の一つに裁判というのがあり、それをする為には法律知識も必要になります。
そんな仕事をしたくないならば、実務内政官を是非雇いましょう。
『暴れん坊将軍』における大岡越前こと大岡忠相がこれにあたる。
で、ちょっと注意してほしいのが、仕事を『任せる』のと『投げる』のは意味が違う。
有能な内政官を雇って全部任せていたら、いつの間にか実権を奪われていたというケースは無数に転がっていたり。
内政において理想的な展開は、
領主が方針を出し、「開墾するぞー」
傅役がその方針をチェックし、「国境沿いは戦場になるので避けましょう。それ以外は問題ないですよ」
実務内政官がそれを実行する。「領主のGOサイン出ました。予算を用意して開墾します」
大体こんな感じ。
そして、傅役と内政官の間で意見なんかが割ると派閥争いに発生するので領主は両者の調整をちゃんとしないといけない。
人を使うというのは行き着く所、人に使われるのです。
武官・護衛役 戦場はまかせろー
これは言う必要もないと思うけど、一応解説を。
『水戸黄門』で言う助さん格さんという佐々木助三郎と安積澹泊がこれ。
で、この武官・護衛役は何人雇えばいいのか?
領主の身の回りだけを守るならば、爺や侍女が戦えるならば二人、戦えないならば三人が目安となる。
これは、領主を中心に護衛が囲めるという理由から。
じゃあ、武官こと武将として戦場に出す場合どれぐらいの将が必要かというと、簡単な戦陣が組める程度には欲しい所。
簡単な戦陣というのは軍を三つに分けている。
縦に広がる『先陣・本陣・後詰』のパターンや、横に広がる『左翼・本陣・右翼』のパターン。
本陣は領主が率いるからやっぱり最低二人は必要になる。
これも爺や侍女が武将ならば話が変わるのてそれに応じて増減するといい。
諜報官 情報を制する者は全てを制する
言わずと知れたスパイ・間者・忍者・くノ一など。
『暴れん坊将軍』にも『水戸黄門』にも共通しているぐらいこの職は必要なのだ。
だが、同時にこの職は雇うのがかなり難しい。
何しろその専門職を持つ者は情報に長けているからなかなか捕まえられないのだ。
爺や侍女がこの手の諜報官だったというのはけっこうお約束としてあったりするのは、外部から雇って逃げられた場合致命的情報流出が発生するからにほかならない。
外部からこの手の諜報官を雇う場合は注意が必要である。
あと、情報入手手段として以下の職業を雇い入れるのもあり。
娼婦 スパイと並ぶ最古の職業。情報入手成功率高。デメリットとして領主を誘惑したり、男とくっついたりとトラブルも多し。
商人 経済情報については精度高。金で応じると同時に金で寝返る可能性もあり。
神官 宗教が地域に根付いているといい情報源。同時に宗教の影響力が強すぎると領主を無視する傾向も。
八兵衛 実は貴重なんですよ
『水戸黄門』に出ているうっかり八兵衛こと八兵衛。
西洋では宮廷道化師と呼ばれる役回りである。
彼らは領主に向かって無礼なことでも自由にものを言うことができる唯一の存在であり、それゆえ家中が領主に控えて言わない事や領主にとって不利な事を言う事ができる。
領主というのは絶対者でもあり、権力というのは腐敗する。
ましてや絶対権力は絶対に腐敗する。
周囲を賛同者ばかりで固めると組織がまともに機能しないのと同じで、この手の人間は一人は欲しい所である。
同時に、その批判を受け止める度量を領主が持たないといけないのだが。
ちなみに、この話を書くために八兵衛を確認して元は町人の出であり、盗賊見習いだったという設定をみてびっくりしたりして。
では、領主の皆様、良い領主生活を。