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改めて思う俺の日常

7月10日

 俺が教師奴隷宣告を受けてから1週間が過ぎた。

 俺はこの1週間でちょっとした有名人になっていた。勿論、悪い意味で。何故こうなったか、理由は明白だった。

 俺が最近、学校内一危険な場所、進路指導室に出入りしているからだ。

 俺は今日もそこから呼び出しがあり、進路に行くことになっている。

 正直、すっぽかしてもいいが後が怖い。っていうかそんなことできない。あのドS担任が見張っているからな。恐ろしくて帰れん。

 後でどんな仕打ちが待っているか…。

 と、言うわけでヘタレな俺はこれから進路に向かう。自分でヘタレっていうのも何だけど……

 

 俺はいつもどうりの道を歩く。面倒臭かったけど、遠かったけど、一週間通えばさすがに慣れてくる。窓からいつも通る渡り廊下が見える。そこを目指して階段を下る。

 そういえば最近クラスの友達から聞いたんだが、というか聞こえてきたんだが、進路が生徒から敬遠されがちなのってやっぱりあのオネエの先生のせいらしい。

 入ったら何されるかは知らないけど、大概の男子は心がぽっきり折れるって話だ。

 それが無事に生還しちゃったから、中で何があったのかいろいろ噂になっているらしい…。

 はた迷惑な話だな。

「ちわーす」

 軽く挨拶をして入る。さすがに一週間通うとなじみのラーメン屋みたいな乗りで出はいりしていた。が…

「待っていたわよ」

 一週間たってもこれには慣れなかった。

 女口調でだみ声のおっさん。

 この一週間ドアを開けるたび、どれだけ幻想が壊されてきたことか。

 これが夢であってほしいとこの一週間願ってきたが現実は現実のままだった。

男口調の女ならまだ許せる。いや、萌える。

でもこれは精神的にくる。男子の心が折れるのも分かる気がするよ……

「今日も張り切って働いてもらうわよ」

「へーい」

 自然な流れで作業に取り掛かる。今日もいつものように書類を整理して部屋の掃除、そして先生のマッサージをして放課後の奉仕活動が終わる。終わるころには決まって5時半になっていた。

「ありがとうございましたー」

 いつも通りの一日が終わり達成感で満たされていた。

 さあ、帰ろ。

 ドアに手をかけ開けようとした時、ふと思う。

 何やってんだ俺……

 なんでこれが俺の日常みたいになってんだ。

 確かに奴隷だと言われて面倒事をいろいろ押し付けられたが、ここまで俺の日常になっているのはおかしいだろ。

 どうなってんだ。洗脳されてんのか?

 もっと俺の日常はダラダラとしたものだったろ。そんな俺がこのままでいいのか。また教師どもに奴隷のようにこき使われる毎日で。そんな日常いいはずがない。これじゃ先生の思う壺じゃないか。今こそ反論すべきだ。取り戻せ俺の日常。

 と1週間経って今更ながら一つの答えが導き出されていた。

 ホントに今更だけど…。

 そしてここに至るまで約4秒。この葛藤が半開きにしたドアの前で行われ、その間俺はフリーズしていた。

「どうしたの?そんなところで。壁と睨めっこしてるんだったら私と睨めっこしましょ」

 と背後から生温かい声がかけられる。

 不意に声をかけられてびっくりしたが、チャンスだ。長い夢を覚ますために、俺の平穏な日常を取り戻すために…

 

 そして心に誓った志とともに先生のもとへと向かう。

 一週間前の自分を取り戻すために、日常を取り戻すために…

「先生、話があります」

「何かしら」

「今まで行ってきた奴隷業務兼、奉仕活動を辞めたいんですけど」

 言った、言ってやった。これで解放される。

 しかし、その瞬間から先生の顔から笑顔が消える。

「ああ? 今なんていったの」

「だかりゃ、辞めたいんれふ」

 ヒェェーー超怖え。恐怖のあまり声が震える。

「なぜ辞めたいのかしら」

 いつもよりどすの効いた声だった。

 どうしよう、理由なんて考えてなかった。

「えーっとですね、他にやりたいことがあるんです」

「ドンナこと」

 どんどん先生の顔が曇ってくる。

「それは、もっと大きなことです」

 しまった。漠然としすぎたか。これじゃあ返答は決まって…

「大きなこと?」

 やっぱり、予想したとうりだった。こうなってくるとあとは内容を具体的に述べればいいだけの単純作業だ。

「そうです。大きなことです。書類の整理とか掃除とかマッサージとかじゃなくて、たくさんの人に役に立つことがしたいんですよ」

 なんとか言い切った。この言葉を辞めるためだけの言い訳に使うとは思わなかった。

 すると先生の顔が笑顔に戻った。

「そういうことなら早く言ってくれればいいじゃない。書類整理や掃除じゃつまらないってことなんでしょ。わかったわ、あなたにもっといろいろなことやらせてあ・げ・る」

 と言うと俺の肩を2度軽くたたき、先生は仕事に戻る。

 うぇーー吐き気がってこれはいつものことか。

 そういうことじゃないよ先生~。全くどういう風に解釈したらそうなるんだよ。

 俺は心の中で嘆いていた。

 ということはまだ奴隷業務がつづくのか。は~っと自然にため息が漏れる。

 呪いの呪縛は解かれないまま、地獄の日々は続いていく。

 まったく、どこで選択を間違えたんだろう……


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