アブラゼミの一生
またまたコメディーを書いたカルタです!
アブラゼミの可笑しくも悲しい一生をどうぞ!!
俺はアブラゼミ、名前はまだ無い。これから付く予定も無い。
だんだん暑くなってきた七月下旬。人間達が寝静まった深夜、俺は羽化を終えた。
羽が乾いて落ち着き、改めて思う。
俺は羽化に成功した。いわば勝ち組だ!
フハハハハッ、崇めろ愚ゼミ共!!
《調子に乗ること十分》
…………ハッ。
そうだ、こんなことしてる場合じゃない。
残りの人生は約七日間。その間に俺は、俺は……
子孫を残さなければならないんだっ!!
……そこっ、『このエロ野郎』とか言わない!
本能なんだよ、しょうがないだろ!
謝れ、子孫残して即死ぬ俺に謝れよぅ!
《錯乱すること十分》
…………ハッ。
また時間を無駄にしてしまった、って眩しっ!?
うわっ、もう朝かよ!
……涼しくてやる気出ねぇな。
もっと、暑くなれよ!
羽化で疲れたし昼まで寝よう。
そして起きると、辺りは闇に包まれていた。端的に言おう、夜だった。
…………畜生ォォ〜〜〜!!
なんてこった、人生の七分の一終了だと!?
俺まだ鳴いてないよ?雄なのに俺まだ鳴いてないよ?
今から寝れば起きれる、そう信じて眠りに着く。
仲間達の声が聞こえる。暑い、眩しい。
二日目、起きたのは昼だった。
腹が減ったので昼食を食べる。元気百倍アブラゼミ!
さて、俺も鳴くか!
俺「ジジジジジジジ」
ミンミン「ミーンミンミンミン」
ツクツク「ツクツクホーーシツクツクホーシ」
俺「ジジジジジジジジジジ」
…………さて、気付いたことが一つある。それは、
アブラゼミの鳴き声地味じゃね!?
畜生、なんで『ジ』しか出ねぇんだよ!
何だこの壊れた楽器みたいな発音器官は?
オイッ、そこのミンミンゼミ、今すぐどや顔をやめろ!
結局夕方まで落ち込み、気付いた……
『ジ』しか出なくても雌来るじゃん。
三日目、雨。
昨日の反省を活かして頑張ろうと思っていたのに拍子抜けした。
その後、夏はやはり雨が多い。四日目と五日目も雨。
そして、六日目。
待ちに待った快晴!
他のセミ達もやる気満々で朝から鳴いている。
だが、こういう日こそ要注意だ。なぜなら……
「ジジジジジッ、ジージーッ!!」
くそっ、もう被害者が!
そう、今は夏休み。つまり、ヤツらの……人間達による狩りが始まるのだ!!
無差別に捕獲し、何もせずに逃がす。
そんな人間達に二つ言いたい。
貴重な時間を返せ!そして、何がしたいんだ!?
捕まえ、篭に詰め込み、何もせず逃がす。フッ、意味が分からない。
とりあえず俺は捕まらないように……
「やった、十匹目ゲット!」
なん……だと……?
気付いた時にはもう網に包囲されていた。
だが、このまま終わる俺ではない!
対人間用ビーム、チャージ開始。50%、80%、100%!
人間の指に摘まれた瞬間、俺は……
お〇っこ(ビーム)を発射した。
「うわっ、おし〇こしやがった!」
へっ、ざまあみろ!
人間から逃げ切り、疲れたのでもう寝た。
七日目、体力がほとんど無い。これは、今日までだな……。
最後の日、目的達成の為に鳴きつづけた。
夕方、もう鳴く気力も無い。
夕日を見ながら思う。
あぁ、残念だ。
……でも、地上にこれて良かった。
足から力が抜け、地面に落ちる途中、意識が途切れた。
カルタの短編第三弾、いかがでしたか?
とうとう主役が人間を離れました(笑)
また皆さんに楽しんでいただけたことを願いつつ、これにて後書き終わりです!