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モラ夫未満  作者: ひねみずうみ


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4.インタビュー希望者募集のお知らせ

 私はパソコンを前にして、うーん、と唸って腕組みをした。

 私は先日の大内へのインタビューを、迷った末にすべて載せることにしたのだった。その結果、少し想定していた流れとは違ってきたように思う。ある程度盛り上がれば、夫への愚痴を批判するコメントは当然つくだろうとは思っていたが、それとはまた違う反応もある。いたずらでコメントを書き込み、面白がっているのだろう。

 私はこの道では素人なので、この流れをどう受け止めていいのかは分からなかった。ただ、何事もやってみなければ分からない。私の浅薄な知識で判断するよりは、ある程度自然な流れに任せたほうがいいだろう。


 おまじない


 あの言葉を発した時、一瞬、嫌な気持ちになった。あえて言葉にするならば、何かを繋げてしまった、そんな感覚だ。

 大内の異様に嬉しそうな様子、そして、コメント欄に出現した、大内と同じような行動をする人物。これを分析するには、人間の脳の仕組みについて考える必要がある。

 脳には島皮質と呼ばれる部分があり、人間の共感を司っている。この部位があるからこそ、人は他人の痛みをあたかも自らの痛みのように感じることができる。だが、同時にこの部分は、薬物中毒の症状にも密接に関わっているらしい。自分が悪者を裁いている感覚に陥ると、報酬・快感を司る側坐核という部位が活性化し、その強い快感から逃れられなくなる。


 私はまた唸った。

 この記事が他害を促しているわけではない、という注記をつける必要はあるだろう。だが、コメントの削除は考えていない。ネット民はコメントの削除に敏感だ。削除をすれば見ている人にはすぐに分かるし、こちらに対して不信感を産むことになる。このまま淡々と記事の更新をしていくに限る。

 私にとって、この反応によるインセンティブはおいしかった。失業給付を受けつつ、そろそろ就職活動を始めなければならないが、うまくいけばこのままこれを本業にできるかもしれない。

 私は日課にしている、人気ブログのチェックを行おうと検索画面を開いた。そこで、ぴたりと手を止めた。検索履歴に、見慣れないものがある。


  ブログ 人気

  モラ夫 エピソード

  皮膚 一部

  肉 一部

  インタビュー 方法


 こんな検索をしただろうか。

 もしかしたら、大内から話を聞いたときに、無意識に検索をしたのかもしれない。

 残しておくのも不気味な言葉だったので、私はその履歴を削除した。

  

 気を取り直して投稿サイトをチェックすると、新たにこんなコメントがきていた。


『このインタビュー、匿名なら受けてみたいな』


 おっ、と思った。これは望んだ流れである。島本や大内に紹介をお願いしているが、彼らも忙しいのだろう、今のところ返信はない。一旦は架空の人物のインタビューでも創作して載せようかと思っていたのだが、それにも限界はある。


『インタビューを受けてもいいという方は、DMにてお知らせください』


 私はそんな文章を付け加え、DMを解放した。

 一時間ほどあとに再度チェックをすると、「すみ」というアカウントから、早速連絡がきていた。


『はじめまして。都内在住の主婦です。子どもはもう大きいのですが、うちの夫は何か不服なことがあると不機嫌になるタイプで、モラ夫というほどには強くないものの、我慢しなければならないことが多く、正直悩んでいます。面白いエピソードがお話できるかは分かりませんが、是非聞いていただきたいです』


 私は画面のこちらでにこりと笑った。まさにこのテーマにぴったりだ。

 返信をしたためていると、ぴこん、と新たにDMの着信を知らせる通知が鳴った。

 「A7f9Kp2」という、ランダムな名称のアカウントからだ。本文は一言だけだった。



『きてるよ』


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