地獄の門が今、開かれた――
その日、地獄の門が開かれた。
「愚かな人間共が――」
空。
大穴の開いた空に強大なる悪魔が飛ぶ。
言葉に侮蔑をまとわせているのに、表情にはどこか微笑みを浮かべて。
「凄まじい数だな」
呆気に取られて自分を見上げる人間たちを悪魔は満足げに呟く。
そう。
自分のような大悪魔を召喚するには長い儀式が必要なのだ。
長く、複雑な手順を踏む儀式が。
さらに言えばその儀式は一人では出来ない。
十人でも、百人でも、千人でも、万人でも出来ない。
何せ、大悪魔を召喚するのだ。
それくらい難しくて当然なのだ。
そして、その万を超える数の人間を見下ろしていた大悪魔は沈黙に飽いて喋りだす。
「さて、お前たちは一体なぜ、このワシをよん……」
「助かった!! すみません! そのよくわからないけど禍々しい門の中に私達は入ってもいいですか!?」
「……へ?」
ぽかんと口を開ける大悪魔に人々は口々に叫んだ。
「早く! 早く答えてください!! さっき敵国がこの戦争で核を用いるって宣言したらしいんです!!」
何を言っているんだ?
こやつら。
そう思ったのも束の間、人々はどこから取り出したのか梯子を持って我先にと駆けてくる。
いや、そんなものじゃ流石に空中に浮くこの門には届かないだろ。
困惑をする大悪魔に人々はさらに叫ぶ。
「お願いします! 早く中に入れてください! 核が! この国に来るから!!」
「いや。待て。そもそもお前たちの願いは――」
「そんなもん、あなたの家に入れてもらうことに決まっているでしょ!? 地獄だって言うけれど、ここより地獄なんて存在しないんですから!!!」
――この日、大悪魔は前例がないほどの魂を手に入れたが配下の者達にどうやったのかと聞かれても決して答えることはなかった。




