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7話 魔女の魔法

 ルクレツィアと出会った教会を出て半日。

 あの教会が少し人里から離れていたのもあって、今のところ誰ともすれ違っていない。

 

 (行商人にでも出会えたら、もう少し楽に進めるのに……)


 聖騎士団が目覚めるのに一日はかかるだろうと、教会を出た際にルクレツィアが言っていたので、今は少しでも遠くに進みたいのだが。


 「あっ! あそこ、鹿がいる!」


 鼻歌交じりで隣を歩くルクレツィアが、道草を食いまくるので、思ったほど先に進めれていないのが現状だった。

 聞くところによると、ルクレツィアも一人で知識の収集の為に旅をしていた時期があるという。

 でもその時は、人間に魔女であることがバレない様に気を付けていたため、景色を楽しむ余裕はなかったと話してくれた。


 「おい、ルクレツィア。急いでくれ。

 日が暮れるまでに、もう少し進んだ先の村までは行きたいんだ」


 「そんなに慌てなくても……。

 私たちの痕跡は逐一消しながら来てるんだから大丈夫だと思うよ?」

 

 道中で感じたことだが、魔女の力は案外便利だった。

 ルクレツィアによると、魔女はそれぞれ探求する分野が異なり、それが二つ名の由来にも、行使する魔法の種類にも関係している。

 その中で『所有の権能』は、自分の近くの空間に干渉することができるとのことだ。

 そのおかげで俺たちは足跡みたいな視覚情報や、匂いなんかも上手いこと消しながらここまで進めているらしい。

 逆に言えば、もう戻る道がない──そういうことだ。


 「教会で騎士団の連中に使った魔法は何だったんだ?」


 「あぁ、あれ?

 あれは私が所有している領域内で、許可を持たない者が動けない様にする魔法だよ」


 「長い名前の魔法だな……」


 「まぁ、魔法の名前なんて、ただの儀式みたいなものだしね。

 早い話が、自分の中に明確な魔法の構造、起こしたい現象、それに至るまでの過程が理解できていればなんでもいいわけだよ」

 

 「それが一番難しいから、聖教は祝詞を生み出したんだけどな……」


 「そうだね。誰でも同等の魔法が使えるようになる方法……。

 実に興味深いよ」


 時々、ルクレツィアの思想が古臭く感じる。

 

 「なんだその言い方は。

 ルクレツィアが生まれた頃には、すでに聖教による人類魔法ってのが体系化され、普及してただろ」


 「そうなんだけどね。

 ルシアンは私たち魔女って、どうやって生まれるか知ってる?」


 「どうやってって……」


 魔女の生誕に関しては、様々な言い伝えがある。

 そもそも、魔女っていうものの定義があいまいではあるのだが、一つだけ明確なものがある。


 「魔女は、聖魔法が使えない。

 つまり、魔族の末裔だってのが一番有名な話だな」


 「それだよ、それ。ただの偏見だよね」

 

 ルクレツィアの口調が食い気味になる。


 「──というと?」


 「もちろん、魔族の末裔の魔女も存在する。それは否定しないし、そういう魔女は、人間に敵意を持っているのもほんと。

 でも、ほとんどの魔女が普通の人間と同じように母親から産まれるんだよ」

 

 「そうなのか?」


 「うん、私もそう。

 ちゃんとお父さんとお母さんがいたよ。

 君と同じように、お母さんの母乳で育ち、魔法を習って大人になったのだよ」


 ルクレツィアが胸を張る。

 そんな態度の彼女だが、俺は心の中で少し引っかかった。

 

 (”いる”ではなく、”いた”……か)


 旅を続けていたら、いつか聞く機会もあるだろう。 

 今は話題に夢中になって、せっかくよそ見せずに歩いているルクレツィアの腰を折るようなことはしたくない。

 そう思って聞き流すことにした。 


 「そうなのか……。それで、それの何がその古臭い思想につながるんだ?」


 「魔女っていうのは、職業名の一つなんだよ。

 私は『所有の魔女』の娘だから、そのまま家業を継いで所有の魔女になった」


 なるほど。

 代々続く家業みたいなものだから、魔女は不死だなんていう噂があるのか。

 いつの時代にも魔女は存在し、そのほとんどが二つ名を持っているのもそれ故のことなのか。


 「だから基本的には、先祖の残した書物で知識や魔法の構造を教わっていくんだ。

 つまり、人間社会から離れていけばいくほど、情報が古くなってしまうんだよ」


 「なるほど」


 合点がいった。

 俺も昔から気になっていた疑問が晴れたのだ。


 ──なんで魔女は、人間社会に近づくのか。


 魔女の魔法は特別だ。

 俺たち人間が使う聖魔法とは対照的な魔法体系を持ち、その多くを人間が解明、模倣ができていない。解明できそうでできないのが魔女の魔法の特異な点だ。

 その理由の一つが、神代の時代の魔法と現代の魔法体系の融合版だからということらしい。

 そして、そんな風に魔女は自分たちの優位性を担保するためにも、人間社会との絶縁ができないということだ。


 そうなれば必然的に人間社会に近づく必要もあるし、人間社会で魔法が一般的になったのはつい数十年前だから、そんなに詳しく調べることができていないということか。

 確かに、数十年前なんて、今よりも魔女狩りが盛んに行われ、魔女の魔法解明に世界中の司祭たちが躍起になっていた時代だ。

 そんな時代背景もあり、人間社会の情報に疎い魔女が増えたと……。


 「魔女ってのも、大変なんだな」


 気づけば俺は、それをボソッと声に出していた。




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