16話 教会に潜入
「ひとまず、その教会に行ってみませんか?」
俺はしぶしぶ、カイルを手伝うことにしたが、とにかく早く解決したいのだ。
追われる身である俺が、一国の王太子と一緒にいるなんて、まずいことしか起きないのだ。
「なに? もう敵の本拠地に向かう気なのか?」
「まぁ、まずは確認してみないと何とも言えないですからね」
「わかった」
カイルが俺をその教会まで案内してくれた。
庭木の手入れがしっかりと行き届いた大きな教会だった。子供たちが走り回っているのを見るに、修道院が併設されているのだろう。
隣から、カイルがコソコソと耳打ちする。
「なぁ、ルシアーノ。俺の変装はどうだ?」
カイルはこれでも王太子である。
顔バレだけは避けなければならないので、顔の半分を布で隠すことにしたのだ。
服装は、もともと悪魔狩りと見間違うくらいの格好だったのでそのままだ。
「完璧ですよ」
カイルは俺の返事にどこか満足そうで、ふんと鼻を鳴らす。
──あの~、何かご用でしょうか……?
一人の修道女が話しかけてきた。
手に放棄を持っていることから、彼女はこの教会のお手伝いさんだろうと予想がつく。
「ああ、すみません。私たち旅のハンターでして……立派な教会だったので見学させていただけないかと思いまして」
「まぁ! それは素晴らしいことですね!」
修道女──名をイザベルというらしい。
イザベルは、俺たちを入信希望のある客人として、教会内を案内してくれた。
「ルシアーノさんは、どなたか大切な方はおられますか?」
教会の中庭と本堂を繋ぐ廊下で、イザベルが俺に問いかける。
大切な方……そう言われて、俺の脳裏に一瞬ではあるが、ルクレツィアの顔が浮かんだ。
ぶんぶんと頭を振ってから、
「思いつかないですね……」
そう答えた。
「そうですか。私たちは大切な方々の為に、毎日女神さまにお祈りをささげるのですよ」
「イザベルさんの、大切な方とは?」
「そうですね……この教会の子供たちや、一緒に働いている皆さんでしょうか」
教会にいる子供全員が、希望して入信しているわけではない。
むしろ、俺みたいに家業の都合で修道院に入った子供は少数だ。それ以外の多くが、戦争や貧困、そんな大人の事情で、家を失い、家族を失った子供たちだ。
だからこそ、教会の運営費は基本的に国から支払われる。それ以外の金は、街の人たちからの基金や資産家からの援助などに依存している。
つまり、大きな街程、教会も豊かになりやすく、街一つに対して教会が多くて三つほどになるのだ。
イザベルの話によると、この教会はここアンネル教王国の中でも一番に大きい教会らしい。
「それにしても、本当に立派ですね」
俺は本音を呟く。
だからこそ、カイルの妹さんがこの教会に賄賂を渡しているという線は薄くなる。
残る可能性は……
「すみませんが、この教会の責任者の方はどなたでしょうか?」
「はい、高位司祭官の称号を持たれている『ローレン』様です」
高位司祭官というのは、この大陸でもっとも普及している女神信仰の教会議会から任命された職位のことだ。
長年にわたる、女神さまへの忠義が認められることが大切らしい。当然、女神への信仰が厚いほど、高度な聖魔法が使えるようになると信じられているから、相当な実力者だろう。
高位司祭官の上には、最高司祭官という職しかないので、実質的な教会の幹部だ。
「……おい、ルシアーノ。なぜそんなことを聞いているんだ。
早くミリアのことを聞いてくれよ!」
声でバレるのを防ぐため、カイルにはできるだけしゃべらない様に念押ししていたのだが、どうやら我慢の限界のようだ。
(そんな堪え性のない奴が王太子ね……。これじゃあ、カイルの父もまだまだ王位は譲れないだろうな……)
そんな俺には無関係なことに、心配する気持ちをもちながら、俺は本題をイザベルに聞いていくことにする。
「イザベルさん、少し聞きたいことがあるのですが──ッ!?」
早速出鼻をくじかれてしまった。
俺の視線の先、俺たちの進行方向を横切る形で、見慣れた姿が視界に入ってきたのだ。
「何してるんだアイツは……」
銀髪が風になびいている。
隣には綺麗な服を着た少女がいて、ルクレツィアの手を引いている。
「……ん? どうしたルシアーノ。急に立ち止まったりして──ってえぇ!?」
カイルの反応を見るに、ルクレツィアと一緒にいる、茶髪の少女がミリア嬢で間違いなさそうだ。
こうして、俺は半日ぶりにルクレツィアと合流することとなった。
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