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12話 イオナは、友達だった

 「さて、ここら辺でいいか」


 俺たちは、人目を気にして飯屋に移動した。

 四人掛けの席で、俺の隣にはルクレツィアが。向かいにはイオナが座っている。


 「とりあえず、久しぶりだなイオナ」


 「そうだね。卒業後、ルシアンはすぐに実家のお仕事に就いたもんね」


 思い出したくもないが、思い出さざるにはいられない。

 修道院では、十歳から十五歳くらいの子供が集められ、共同生活をしつつ聖教について学ぶ。悪魔とはなにか、魔女とは何者なのか、女神さまがどれ程偉大で慈悲深いのかなどだ。

 まぁ、今となってはその全てが真実なのか疑わしく思う。隣に座る魔女が、たいそう退屈そうに飲み物に口を付けているからだ。


 「ねぇ、結局そちらのイオナ……さん?は、何しにここに来たの?」


 どこか棘のある言い方だ。

 とは言え、なぜイオナがこの街にいて、何の目的で俺に話しかけてきたのかは気になっている。

 あの聖騎士団の連中が教会に通報したって線も考えられるが、それにしては早すぎる気がするのだ。


 「んー? 私は祈祷師としての仕事だよ」


 どうやら、この街には悪魔狩り(ハンター)は多く居ても、そのほとんどが実力で劣っているのだという。

 そんなこの国の近くに、少し厄介な悪魔が現れたとの通報を受けて、表面上は友好国となっている聖セントリア帝国の祈祷師である彼女に白羽の矢が立ったらしい。


 適当に話を聞いていたが、だいたいそんな感じで間違いないだろう。


 「──で、たまたま俺達に出会ったと……。

 それにしても、なんでレティの正体に気づいたんだ?」


 「そんなの決まってるじゃん。

 ルシアンが最近受けた仕事が、所有の魔女の討伐で。今日、久しぶりに会ったルシアンが、見知らぬ女の子を連れてた。

 つまり、そういうことでしょ?」


 なんて頭が回るのだろう。

 そういえば、イオナは昔からよく頭の切れる奴だった記憶がある。

 

 「……まぁ、お前に嘘ついてもどうせバレるだろうしさ」

 

 「いや、ルシアンが分かりやす過ぎるんだよ」


 「……。」


 「なに?」


 俺って結構、顔に出ないタイプだと思っていたのに。

 

 「いや。それで、イオナはどうするんだ?」

 

 「どうする、とは?」


 そんなの決まっている。

 

 「俺のこと、レティのこと──今の俺の状況のすべてだよ」


 「うーん……。

 私は、ルシアンが納得してるなら、それでいいと思う」


 イオナは一口、コーヒーを口にしてから話を続ける。


 「……けど、迷ってるならいつか後悔するよ。それだけは忘れないでね」


 「そうか……」


 その言葉には、いったいどれだけの思いが込められているんだろうか。

 心配してないわけじゃないことはわかる。イオナはそんな冷たい奴じゃない。

 それは昔からそうだから、そういう確信があるのだ。


 「ねぇ、ルシアン」


 ルクレツィアは、すでに外用の呼び方を続ける気はないらしい。

 それだけイオナに気を許しているということなのか、それとも面倒になればいつでも殺せるっていう自身の表れなのかはわからないが、それでも俺としては少し嬉しい。

 

 「話、長くなりそうだし、私は席を外すね」


 そう言い残して、ルクレツィアは先に店を出た。 

 イオナに一礼をして、それにイオナも手を振って応じている。


 ルクレツィアは魔女だ。

 つまり、祈祷師(イオナ)を殺して当たり前──それが世間の常識なのだ。

 そんな彼女が、イオナと俺の話をおとなしく聞いて、今しがた気を遣って席を外した。

 それだけで、ちょっと新鮮な気分になれるのだ。


 「逆にさ、ルシアン達はこれからどうする気なの?

 もちろん、話したくないなら無理にとは言わないけど」


 「いや。正直、どうするかなって感じなんだわ」


 「ルシアンらしいね」


 「……?」


 「ルシアンってさ、昔からそうだよね」


 (はて……なんの話だ?

 イオナの口ぶりから察するに、俺の今の状況は別に異常ではないということか?)


 会話が途切れた。




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