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11話 ハンターと祈祷師と、俺……

 小腹を満たしてから、本格的に街の探索を始める。

 まずは街の中央を目指して歩くことにした。


 「ルシアーノ、あれはなに?」


 中央に進むに連れ、人が増えてきたので当然、呼び方は外向けになる。

 そして、ルクレツィアは街の至る所が気になるのだ。


 「あぁ、あれはこの街のギルドだろうな」


 「へぇ〜……」


 「どうした?」


 魔物狩り(ハンター)の宿だと知って、急にルクレツィアの表情が暗くなる。

 どうしたのか、聞いてみたことを俺はすぐに後悔した。理由は単純、魔女と聖教会、ハンターはそれぞれ仲が悪いからだ。


 聖教会は魔女を神敵として、嫌悪しているし。

 魔物狩り(ハンター)は、金になればどちらの味方にでもなる。

 当然、ハンターにもいい奴はいるがごく僅かと言っていいだろう。


 「この街って、どれくらいの魔物狩り(ハンター)達がいるのかな?」


 ルクレツィアの声は、とても冷たかった。


 「……さぁな。考えても仕方ない。気にすんな」


 俺は精一杯、言葉を繕う。

 

 「そうだね〜。今は”デート”、だもんね?」


 振り向いた彼女は楽しそうに見えた。

 

 「そうだな。それより、俺魔道具屋に行きたいんだけど──いいか?」


 「もちろんだよ」


 俺たち……いや俺は元だが審問官てのは、主に悪魔や魔女を相手する組織だ。

 だから使う武器だって、それ専用に特化していると言っていい。


 「ルシアーノは何買いたいの?」


 「銀の銃弾」


 「あぁ〜……アレね」


 渋い顔をされた。

 銀の武器──審問官はそれで魔女を殺してきた。そりゃあいい思いはしないだろう。


 「あれ、痛いんだよね……。傷の治りも遅いし。本当に人間達は私たち(魔女)を殺す方法の研究には、本気出すんだから」

 

 そんなことを飄々と話す彼女も、過去には人間たちの攻撃を何度も食らってきたのだろう。

 両手で胸を抱き、身震いをする真似をしている。


 「でもさ、なんであの教会に来た騎士たちみたいに剣とか使わないの?」


 銃の攻撃ってのは、案外難しい。距離が離れれば離れるほど、狙いが定まらないのだ。

 もちろん、しっかり狙いが定まるまで待ってくれるような優しい悪魔や魔女には出会ったことがないのである。

 そして何よりも──

 

 「俺がそんな近接戦闘向きの体格に見えるか?」


 「あぁ〜なんか、弱そうだもんね」

 

 悲しいことに、そういうことだ。


 「俺には銃の方があってるんだよ」


 「かわいいね」


 (なんでそんなに嬉しそうなんだ?)


 理由はわからないが、ルクレツィアが笑顔で楽しそうに過ごしてくれるのが内心うれしい。

 そんなことを口に出したら、彼女がまた調子に乗って俺のことをからかってきそうなので、絶対に言わないが。


 ──おい、君……ルシアンだろ?


 残念ながら楽しい時間というものは短いものだ。

 無視しようと思ったが、後ろから肩を掴まれてしまったので、その作戦は無理だった。

 

 「どちらさま……って!? お前、イオナか?」


 観念して振り返った先、俺の視線に入ってきたのはよく知った顔だった。

 女神官(シスター)でありながら、腰に片手を置き、もう片方の手をひらひらと振る彼女。


 「ルシアーノ……誰、コイツ?」


 ルクレツィアのこめかみに怒りの模様が浮かぶ。


 「落ち着けって。こいつは──」


 俺の話にイオナが割り込む。


 「初めまして、私の名前はイオナ=ノート。職業は祈祷師(エクソシスト)よ。

 よろしくね、所有の魔女──ルクレツィアさん」


 一瞬にしてルクレツィアの目の色が変わる。

 深紅に染まる瞳の奥に、警戒と敵意の念が映し出されている。


 「待て待て! おい、イオナ! ルクレツィアも、落ち着け」


 「ルシアン、下がって。

 こいつは敵よ」


 ルクレツィアの声はいつもより低く、冷静に聞こえる。


 「なに? 私と戦う気?」


 一方、イオナも煽り口調だ。

 祈祷師の武器、銀の十字架(ロザリオ)に手をかけている。


 「だから、二人とも待ってくれ。

 こんな街中で戦うなんて正気じゃないぞ!?」


 「ルシアン、この女はダメ」


 ルクレツィアは一切聞く耳を持たない。

 空気がどんどん冷たくなる。


 (あぁ、どうして俺の周りは話を聞かない奴しかいないのだろう……)


 考えるだけで頭が痛くなる。


 「……な~んてね。

 ごめんなさい、ルクレツィアさん」


 不意を衝くイオナの謝罪に、ルクレツィアは口を開けたままになった。

 頭の上に?マークが回っているのが見える、気がする。


 「え? え、なに? え?」


 完全に思考が停止しているみたいだ。

 すでに空気は、温かさを取り戻していた。




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