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下村談義2

「でも、そんなん下村が望んでも、藤波さんは神職に仕えたこともないし。第一牧師でもない人に縋ってもしゃあないでしょう。ただ深詠子をよく知ると云うだけで、彼奴あいつの罪が報われるはずもない」

「あの男は、深詠子が来る前は、磨美さんに積極的に誘って来たんでしょう」

「下村は外見的に目立つ人がお望みなのよ」

「社交的な人がいいんですか」

「周囲に積極的に働きかけなくても、存在そのものが、見る者を引き寄せてしまう人かしら」

 深詠子は気に入らない人には、徹底的に相容れない性格で、頭から相手にしない。でも相手の機嫌を損ねず上手くスリに抜けるこつを会得している。あれには感心した。ああ謂うふうに接しておけば問題ない、と深詠子は相手が厳つい男でも言葉巧みに退けてしまう処が絶妙だ。面識がない相手がちょっかいを出そうとしても、邪険に扱わずに彼女の凜とした出方で相手には尊厳がある存在に写る。

「藤波さんは、深詠子と付き合っていて、そんな経験はありませんか?」

「繁華街で彼女と待ち合わせをした時にありました、絡んできた相手も彼女の一言でアッサリ行って、彼女と一緒なら変に絡まれることはなかった」

 あたしに冗談を言ってる時に横槍が入っても、直ぐに切り替えると、相手も愛想笑いを浮かべて行ってしまう。何処にそんな威厳があるのか少し驚いた。

 あんな人達は、あんな風にあしらえば直ぐに行ってしまうって言われても、誰でも真似は出来ない。深詠子の持つ独特の雰囲気が有って始めて気圧けおされる。

「でも下村にはそんな小細工は要らない。彼奴は彼女のそんな性質まで仕事に利用していた」

 どうしても落ちない商談相手には、下村は深詠子を同伴させて料亭に誘って、相手にこの人が奥さんならばと商談をまとめた事も有った。

「余り使わない奥の手なのよ。だから真苗ちゃんを認めるなんて、下村にすればどうってことないのよ」


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