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下村の心境3

「というよりは子供らしくないんです。ああ、取り調べの人から聞いたんですが。真苗があんたのお世話になってるそうですね。まあ元々はあんたの子やさかい元の鞘に収まったちゅうことですか」

「それは最初から、結婚当初から知ってたんですか」

「上手いこと磨美に乗せられてしもた。でもそんなんはどっちでもいいんです」

「と謂いますと」

「それで深詠子と一緒になれるんです。それぐらいはどってことありませんよ」

 それほど下村に取って深詠子はかけがいのない人なのに、それでも彼の愛が、入る余地はなかった。好きであっても憧れに近い一方的な片想いだったんだ。おそらく深詠子が躾ける真苗も同じように、心の距離を取っていれば子供らしく見えなかったに違いない。

「それでも子供達はいつも三人一緒に遊んでいるんでしょう」

 安定した下村の様子から家族に踏み込んだ。

「まあ、真澄と孝史はいつも一緒だけど、真苗はお姉さんみたいちょっと二人とは距離を空けてた。それは、おそらく深詠子の影響だと感じ取れるほど、真苗はきちっとしてた」

「真苗ちゃんはともかく、その美澄ちゃんと孝史君の首を絞めるときは、何の迷いもなかったんですか」

 下村の心の動きが、微妙に寄った眉に伝わった。

「その時は早く楽にさせたい。でも二人が抵抗すると。ただ早く死んでくれと、俺も直ぐ後を追うからと思えばこそ力を抜けなかった」

 そこで下村はもうがっくりしてこうべを垂れた。疲れたのか気落ちしているのか。同じ質問を弁護士がすれば、こんなに憔悴仕切ることはなかったはずだ。そこに言い尽くせぬ感情の嵐が、この男の頭の中で今、烈しく渦巻いている。今日の面会はこれ以上は無理だと悟った。

 今日も下村との接見予定を伝えると、この前のように帰りに立ち寄って、様子を訊かせてと頼まれていた。おそらくあの家族に一番深入りしている磨美の証言で、刑期が大きく左右されては、と彼女は思い、慎重を期して藤波の話を聞きたいのだ。


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