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磨美に訊く2

 先ずは下村には絶対に気があるように見せる。その上で色々理屈を付けて引き延ばさせる。今日は絶対あなたと一緒に食事をしたかったのに、磨美がどうしても今日のコンサートに申し込んだチケットが手に入ったとかですっぽかす。これに似たような事で三回に一回はすっぽかしたり、デートの時間に間に合わなかったりさせた。でもそのあとには必ずこれだけあなたにゾッコンだと、ここぞとばかりにアピールポイントを振りまいた。段々調子に乗って来ると、深詠子は「あたしを信じて欲しい」と疑いを払拭させて下村を釘付けさせた。その頃には一時間待たそうが、深詠子の姿を認めると、それだけでもう下村はメロメロになった。此処が勝負所とお腹の子を承認させてそれと引き替えに結婚を承諾した。

「ここまで焦らされたら、もうお腹の子供なんて眼中にないのよ、下村には。認知処が自分の子として扱ってくれた」

「それは今も変わらなかったのか」

「勿論、それどころか幾ら離婚を持ち掛けても下村はウンと言わずに、ああなってしまったのよ」

「俺には、そこまで下村が執着する理由が解らない」

「器量の良い嫁さんが居ればいい仕事が来るのよ」

「ハア ? それはないでしょう」

「それだけの自信が精神力に結びついていればねえ、でも哀しいかな、そこに愛はないのよ。だから挫折すればそれまで」

 そうなると仕事に生きがいを感じる下村の憐れさが、そこでもろに出たのか。でも藤波さんはそうじゃあない。あなたはしぶとく生きられる。真苗を託した甲斐があると人だと、そこで見送られた。



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