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下村に訊く3

 下村の頬が少し膨らんだが彼は時間を気にしていた。やっと気持ちをほぐせたのに「どうして結婚したんですか」と一気に攻めた。こういう質問を期待していたのか、目許が緩んだ。

「深詠子の方もまんざらでもなかった。これは脈があると思ったんですよ」

 磨美さんの時はこれで肘鉄を食らって、慎重に今度は彼女の出方を確かめ、満を持して告白した。ここまで来ると下村を完全に藤波のペースに引き込めた。

「でも出会ってそんなに日が経ってないでしょう」

「二ヶ月はなかったから、最初はドッキリカメラじゃないかと思った」

「まさか、誰が企てるんです」

「磨美ですよ。彼女は深詠子が入社早々から一番の仲良しで、右も左も分からない深詠子をよく教えていた」

「それで磨美さんならやりかねない、と思ったんですか」

「あの子は食わせ者ですよ。まあ、相手にも因りますが」

 此処で下村はじっくり藤波を見た。

「貴方ならそんなことはしないでしょうが、あたしにはねぇ」

 磨美に食らった肘鉄が、かなり余韻を持って此の時は効いていた。

 あとで深詠子に聞いたが、あの時は磨美にかなり入れ知恵された。

「例えば」

 深詠子の意志が硬いと知ると、どうせなら、散々勿体ぶってらせろ、と磨美は吹き込んだ。

「どんな風に」

 と藤波も二人を仕切るアクリル板に鼻が付くぐらい顔を寄せた。そこで立ち会いの警察官から時間ですと言われた。

「エッ! いつも短く切り上げてるんですから、今日ぐらいはおまけして下さいよ」

「もう五分も過ぎてます」

 話が載って立会人も引き延ばしたが、これ以上は規則でまた日を改めるように言われた。藤波が続きは磨美さんに聞きますと言うと、彼は結果報告を待ってる、と警察官に付き添われて部屋を連れ出された。


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