表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/147

可奈子4

「何処へ行くの?」

「ちょっと早いが今日の仕入れに行く」

「付いて行ってもいい?」

「これから観光客が増えて忙しくなるだろう」

 観光客は帰りに立ち寄り、喫茶店は土産物屋と違ってまだ暇だそうだ。仕入れに使う軽トラを置いてる駐車場へ向かった。

「それで付いてきたのか」

「そう、いつもゆっくり出来ないから。それにあの後片付けも今日は億劫なのよ」

「どうして、なんか言われたのか」

「あなたが余計な事をさっき言ったからよ」

 昔の彼女なら「何よッ」と、聞き流すくせに、えらく大人になったもんだ。なれない嫁ぎ先で相当揉まれたか。彼女を此処まで矯正させるとは、相手もかなり手こずった挙げ句の決断か。それでも五年も持った。可奈子の器量に悩まされた日々が想像出来る。幼い時から可奈子を見ている藤波は、彼女のツボを心得て付かず離れず、此処ぞ、と思うときに手を差し伸べる。このタイミングを間違うと言い争いが限りなく続く。出戻りで実家に帰った彼女は、その扱いを憎いほど心得ていた。

「考えすぎだろう、誰も聞いてないし。相手の世間話に夢中で聞こえてないよ、それよりその髪どこまで伸ばすんだ」

「お嫌いですか」

 としとやかに言うと、彼女は急に手の指を広げて、胸まである長い髪をすかし始めた。気分転換なのか、それとも自慢の髪を披露しているのか判断がつかない。

「いや、心には響くが、手入れが大変だろう」

「平安貴族のお姫様に比べれば大した長さじゃないわよ」

 彼女らには身辺をお世話してくれる侍女が居るからいいけど、一人ではとても洗うのが大変だ。それで恋が時めくのなら苦労はものともしない。そんな彼女らの恋に掛ける情熱を見習うには、ほど遠い長さの髪だった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ