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深詠子の通夜3

「それで今夜のお通夜には、妹が遺してくれた真苗ちゃんを藤波さんが迎えに行ってるんですが……」

「あっ、そうですか、でもさっきの話だと施設に預けられてるそうですね」

 父親は相変わらず神妙な顔つきだが、訊ねた奥さんは驚きながらも表情が落ち着いた。

「もしよろしければ、私の方で引き取りたいんですがどうでしょ」

 これには両親よりも磨美が、何を急に言い出すのかと驚いた。

「でも、それは君嶋さんのご実家で十分話された上で云ってるんですか?」

「いえ、私の独断で、連れて帰っても内のもんは何も言いませんから、ご心配無く」

 これには向こうの奥さんが、そうされたらと話に乗って来た。

「うちに連れて帰っても、ご近所や親戚にどう紹介していいか。お父さんはそこまで考えずに連れて帰るらしいので、あたしは君嶋さんさえ良ければお任せします」

 父親は黙って聞いているだけで、反対も賛成も云わない。

「それじゃあ、お通夜から葬式まで真苗ちゃんを立ち会わせますが、それでよろしいですね」

「お父さんどうなの、前々から真苗ちゃんは息子の子か、妖しいって云っていたのに……」

 これには磨美も君嶋も顔を顰めると、父親も黙ってられずに二人の手前、奥さんを叱りつけた。

「お前は何を急に言い出すんだッ。君嶋さんの前で……」

「下村さん、妹が生前に離婚の話をしていたのはご存知ですか?」

「ウん、まあ、事業が失敗して多額の負債を残して、それで妻と喧嘩して、そう云う話が出ていると電話で知りました。今は息子は警察に居て子供の扶養処ではありませんので。取り敢えず君嶋さんにお願いして、近々息子に面会して相談しますが、何度も申して、申し訳ないですが、その話は息子が落ち着くまでお願いします」

「じゃあ葬式が終われば遺骨と一緒に、真苗ちゃんを連れて帰ります」

 どうやら向こうはそれどころではなかったのだ。


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