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深詠子の願い6

「そうなの、深詠子さんも目的のためなら手段を選ばないのね」

 と可奈子もチラッと藤波に同情の視線を寄せて、この人をどれだけ評価しているか気になった。

 下村を丸め込んでまで産み育てたいと深詠子が願望した究極の人は将来を見込める人なのか。協力する以上は啓ちゃんをどう見てるか聞き出した。

 それが年下でしかも大学を中退した学生で、相当、けしかけないと動こうとしない。そんな人の価値を引き立たせるのに疲れて別れた。しかも完全に未練を断つため、下村の存在を利用した。彼に会わせろと迫ったが、金の亡者だと云えば、愛の価値を金で決めるとはなんだ、と半ば強引にあたしは悪女にされてしまった。お陰で綺麗さっぱりと縁が切れたと思った瞬間に、お腹の中の騒ぎに気付いた。一生あの人からそう思われたくない。あれはあなたとあたしとの一生に一度の究極の愛だった。それを証明出来るのはお腹の此の子だと、思い込むと下村は渡りに船だった。と聴いて、ウ〜んと、磨美は長く深い溜め息を付いた。

 ーー深詠子が持つその器量を犠牲にしてまで貫く相手の人ってどんな人?

 深詠子はそれには笑った。

 ーー何処にでも居る人だけれど、その価値はあたしにしか判らないから。会えば磨美はきっとがっかりするわよ。

 ーーそんな事ないわよ。あたしだって男の価値判断は表面でなく、内面の中から見つけ出せるだけの思慮深さは、残念ながらあなた以上に持ち合わせている。判断基準は大きくズレているかも知れないけどね。

「深詠子と会って直ぐに気が合っても、今まで散々に聞かされた男の話を聞いて、男性観では食い違うから安心してあたしは彼氏を紹介出来るし、その別れた彼に出会っても頭ごなしには批評しないで、きっと秘めたものが有る人だと素直に見られると今も思う」

 と磨美は可奈子に語り掛けた。聞いていた当の本人は思い直したように、いつの間にか深詠子の棺の前に立ち尽くしていた。


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