表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/147

深詠子の願い4

 三人は遅い昼食を済ませてホールに戻った。控え室ではサンドイッチとお握りの食べ残しが目に付いた。両親と磨美はこれで腹ごしらえをしたようだ。あんな事件だけに訪れる弔問客も少ないと伺って、両親を残してみんなは控え室を出た。

 ニュースで地元でも話題になり、下村の両親はこの心中事件には先ほどから恐縮している。間に入った磨美も取り繕うのに苦労した。特に両親が気にしているのは孫の真苗ちゃんらしい。その相談に磨美は控え室から両親を残して三人を連れ出し、葬儀会場に並ぶパイプ椅子に各自座った。

「両親は明日の葬式が終わり次第、真苗ちゃんを舞鶴へ連れて帰りたくて預け先を聞かれて困っているのよ」

 どうしたものかと磨美から藤波は相談を受けた。真苗ちゃん自身もお母さんに言われていたのか、それを望んでないと磨美から聞かされた。

「このまま丹後に帰れば唯一、ひとり生き残った孫を養護施設に預けるなんて、世間体が悪いとその一点張りで、もうあたしでは持たないからこのさい藤波さんから事情を洗いざらい話して、両親にはそのまま舞鶴に帰ってもらったら」

「ウ〜ん、どうかなあ。真苗ちゃん本人に決めてもらうか」

「でも、両親には下村の子で説明しているのに、しかも世間の道理より一つの愛に真髄した深詠子は承知しないでしょッ」

「あたしも磨美さんと同じでそう思う。わざわざ啓ちゃんの店まで連れて来てなんかあったらここに来るようにあの子に言ったのよ。だから下村の実家に引き取らせることなどまったく考えてないどころか趣旨に反する」

 エッ! 磨美はこの可奈子の変化に、どうなってるのと半信半疑で驚きながらも同感だと彼女の主張に賛成した。それでも磨美を見て笑って応える可奈子を気味悪そうに見入った。

「さっきお兄さんの話を聞いて深詠子さんの深い思いを知って、それに殉じようとする磨美さんには敬服したのよ。それで実際に磨美さんは深詠子さんから真苗ちゃんをどのようにしたいか聞かされていたの?」

 可奈子にどんなふうに話したんだろうと磨美は君嶋を覗った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ