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深詠子無言の帰宅2

 警察の話だと、ご遺体は損傷が激しく直接お渡しできない。じゃあどうするのか訊くと、先ずは葬儀社に連絡して、そちらの方からご遺体を丁寧に処理をされてからご親族に引き渡している。その説明を受けた下村家から了解の下に、警察から葬儀社に連絡して引き取りに来て貰う事になり、その内合わせに行くことになった。何故そんな事をするのか問い詰めた。

「損傷の激しいご遺体は先ず親族から連絡を受けた葬儀社の方々が深詠子を白装束に着替えさせて棺に納めてくれるらしいのよ」

「じゃあもう葬儀社が深詠子を引き取りに行ってるのか」

「下村さんの話ではそうなの、でも葬儀社は深詠子を何処に連れて行けばいいか判らないから、その自宅の案内と取り敢えず親族が着くまでにするべき通例があればしてもらうように頼まれたのよ」

「なんだ、君が今度の窓口を一手に引き受けてるのか」

「まあ、親族が来るまでね」

「それと、八年前に別れた俺がどう関係してるんだ。第一に深詠子は君の方が親しくて俺より身近な存在だろう」

「でも血縁者じゃないのよ」

「俺もそうだ」

「真苗ちゃんが居るでしょう」

 それはないだろう。二日前に言われてハイそうですかとは行かない。

「下村と付き合ったときは、真苗ちゃんは深詠子のお腹に居たんですから、これは動かしようのない事実です。紛れもなくあなたの子です」

「言っとくが、真苗の母親でも此処では葬式は出来ないぞ」

「もうー、何を聞いてるの。それは向こうが決めるけど、ご近所さんの事もあるから。まあニュースであれだけ騒がれると、出来るだけひっそりとしたいから。葬祭を扱うホールの方が近所にも判らずに、ごく少ない身内だけで厳かに送ってあげられるでしょう」

「だけど下村の親戚は何で一度は断って、今から出掛けるんだ。事件が報道されれば直ぐに駆けつけるのに、やっとこっちへ向かった。とはどう言うことだ」

「それはそうでしょう。深詠子はともかく下村は殺人犯なのよ。だからその家族が肩身の狭い想いをしている。それに深詠子は実家で煙たがられてあたしに押しつけたのよ。冗談じゃないわよ。下村があたしのこと何て言ってるか知らないけど、いい加減にしろって言いたい『それじゃあ親族は田舎で益々肩身の狭い想いを重ねるわけ』って怒鳴り散らして深詠子をやっと引き取りに来る様に仕向けるのも大変だったのよ」






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