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藤波の店4

 あの日、親父から浴びた罵声も、別れ際に深詠子が浴びせた罵声も、真面に受け取った。それでも親父はこの店を藤波に遺した。同じように深詠子も真苗を遺した。テレビのニュース番組は自首した下村を写していた。厳密に言えば、真苗を残したあの男がテレビ画面で見せた貌は。俺のものでないものはお前に返す、と言いたげなつらだった。

「藤波のおやっさんはなあ、あんたのことをよう此処では愚痴ってた」

 源さんは藤波をテレビからこちらへ戻した。

「なんて云って?」

「親の心、子知らずってなあ、嘘やと思うのならここに居る連中に訊いてみてもいい」

「もう死んだ藤波のおやっさんの事は止めとけ」

「そうや、此処はそんな事を忘れるために来てんにゃ」

「おい、それよりテレビ替え、もうあの事件は終わったさかい」

 終わってない。これから始まるんや。その下村の葛藤が。と思いながらリモコンでテレビのニュースを野球放送に切り替えた。

「オッ、珍しい勝ってる。これにしとけ」

「あの電鉄球団は、昔はいつも負けてイライラさせるさかい熱が籠もったもんや」

 三人の話題がそっちにいくと、隅っこに居る源さんが藤波を呼んだ。

「さっきの話やけど、あんたの二十代では、おやっさんの心情を汲むのは無理や。それでもおやっさんは云い足りんかったそうや」

「地に足が付かんやっちゃって云うことやろうか」

「そうやない、しっかりしたもんを探してたんや、けどそれが見つからへんさかい、此処へ戻ってきたんやと、そう言ってた」





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