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真苗に説明する1

 いつまでもこうしていられない。午後三時から店の支度をする。

「どうしても今日は店を開けるの」

 可奈子に言われても、これが親の代から続く居酒屋の辛いところだ。

 大変ねと磨美も連れて来た子と一緒に帰り、可奈子も引き上げた。残った真苗ちゃんにこの家の説明をした。これで置いてもらえるとホットしたようだ。

 二階を見て真苗も気づいたが、横に長い二階部分を、下はその三分の二を店にして、残りを居住地にしてある。

 店の入り口は、間口一間の引き戸で、隣は普通のドアノブの付いた扉だ。このドアは定休日と営業時間外に主に使う。真苗ちゃんは普段こっちのドアから出入りしてもらう。店内と居住地の出入りには扉のない中央を使い、別にある奥の引き戸は滅多に使わない。店内一番奥の通路側の扉を開けると男子用のトイレで、居住地側はその分広くて、そこにコンパクトにバスとトイレが収まり、トイレは女性用のトイレで洋式が普及した今では重宝している。藤波は余り使ってないが、真苗ちゃんが二階で寝起きしても、店の客に気にせずトイレに行けるし、表のドア側から外にも出られた。調理場だけが一階の居住地にはなく店側で、真苗ちゃんは店が開くまでに夕食を済ますように言われた。

 家の中を細かく説明したが、要は店を開ける夕方までと、定休日は店内どこでも好きなように使えた。まだ子供だから開店時と夜は、寝るまで二階で目立たぬようにじっとしていれば良い。普通の家と違うのは夕方から寝るまでの三時間ほど不自由になるだけ。先は分からんが、これも慣れて店の手伝いに顔を出すようになれば、そんな時間はなくなる。

 藤波がひと通り家の説明をすると、真苗ちゃんは早速今日仕入れた食材を店の開店まで手伝うと言い出した。今日使う食材を冷蔵庫から出すと真苗は、見た事ない魚に興味を持った。

「この目玉の大きい気味悪そうなお魚なぁ、何なのこれぇ?」

「鯛のようにええ色してるやろ、見た事ないのか」

 どうやら魚は殆ど切り身で、一匹まるごと見たのは秋刀魚か鰯ぐらいなんやろう。




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