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磨美の話4

「深詠子さんはこの人を愛欲の果てに突き落としたのね」

「でも、そこには憎しみより深い愛情を持っていたはずよ」

「判るもんですか、深詠子さんにすれば愛はお金より軽いんでしょう」

「あんたは会った事もないのによく言うわね」

 磨美にすれば、この女は色々と話の横合いを入れられて面白くないようだ。それでも怒鳴り散らすほど気短きみじかな神経の持ち主でもなく、今も穏やかに可奈子に釘を刺している。

「会わなくても啓ちゃんから伺った。金色夜叉のようにダイヤモンドに目が眩み、この人の人生に陰を落として心を曇らせた」

「じゃあ深詠子はどうして堕ろさなかったの。愛の結晶なんですもの、だから大事に育てたのよ」

「別に結晶はダイヤモンドとは限らないと言うわけか。じゃあ俺を谷底へ突き落とすほど恵まれた生活に走らせた下村優司って言う男はどんな奴なんだ」

「今まで挫折したことがなく、とにかくバイタリタィー溢れる闘志で、ドンドン深詠子を引っ張るから、生活に不安がなかった。矢張り子育てには必要不可欠な要素を下村は揃えてくれたお陰で、真苗ちゃんも下村との間の子も、スクスク順調に育ち順風満帆な人生だったのよ」

「それなのに、か ?」

 磨美の説明に藤波は、今度の家族を巻き込んだ無理心中と、何処でどう繋がるのか訊いた。

「それはあたしにも解らない。だってあのニュースを見て今も本当に下村さんがやったのかと理解に苦しんでいる」

「そう言う兆候は今まで一度も感じなかったのか」

「まあ、子供を含めて家族同士の付き合いには違いないけど……」

 下村はいつも気さくに何でも聞いてくれて、子供達とも親馬鹿みたいに接し、どうしてあんな可愛い子供も一緒に道連れにしょうとしたのか今も分からない。






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