磨美の話2
「ベットと箪笥以外は何にもない部屋ね。ベットは折りたたみだから隅に片付けて遊びやすいように広くしたわよ」
「ああ、手間をかけたなあ、それでこっちは近所に住んでて、小さいときから知ってる立花可奈子、さんだ」
「立花可奈子です」
「あらそう、遅れましたけれど三沢磨美です」
「うっ、あっ、そうか結婚したんだなあ。三沢は慣れないからまあ磨美さんでいいだろう」
と二人をカウンター席に案内して、藤波はカウンター内で取り敢えずビールを勧めると磨美は遠慮なく頂いた。
「何から話せば良いかしら」
「先ずは真苗ちゃんの事かしら」
何でこの人が言うのと磨美は見直した。
「あの子は俺より可奈ちゃんに懐いてしまったようなんだ」
「立花さんに」
「だってそうだろう。あの会社でも俺はあんまり喋らなくて、上司と深詠子が取りなしてくれて少しは良くなったが」
「そうね、その話は深詠子から聞かされた。でも此処なら常連さんばかりで一見さんも少ないから跡を継ぐって言ってたわね」
と磨美に言われた。
「それであの子も、お店手伝うって言ったもんねー」
と可奈子にも言われた。
「真苗ちゃんが、そうなの」
「オイオイ、小学生を使うほど俺は困ってないよ。それより逃走している亭主だって行く所がなければ直ぐに捕まる。そうすれば此処にも警察がやって来れば、どう言って追い払うか事情が解らなければ、そいつらに対処できない」 「そうね、深詠子はあんたと別れてからあたしとはもっと親密になった。あたしが結婚したせいもあるけれど、それで余計に親近感が湧いたと思う」
「親近感、それって同類相憐れむってやつか」
「啓ちゃん例えが悪いわよ」
これには無視して磨美は続けた。




