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磨美の話1

 磨美が二階へ上がると藤波は可奈子に彼女の度量を訊いた。

「こう言う時はグズグズされるのが一番いやなのよね、なるほど深詠子さんが瞬時に手紙に書いただけあって磨美さんは臨機応変で頼りがいがある人ね」 

 可奈子は一連の彼女の動きからそう察した。

「会ったばかりでまだ挨拶もしていないのにどうしてそう思うんだ」

「そうね、あの子達が急に馴れ馴れしく騒ぎ出して、それどころじゃなかったけど。でも子供達を見付けたときの真苗ちゃんの顔見て手懐けるのがうまいと思った」

「いや、それは気が付かなかった。どんな風だった」

「さっきまで表で遊んでいても何処となく落ち着かなくて。どうも外に出されて不安になったのね。あたしが大丈夫、何処へも真苗ちゃんは行かなくて良いようにおじさんは話してるんだからって、それでも余り落ち着きがないから、もう話済んだと思って店に入ったの」

「そうか、それで磨美の子を見てすっ飛んで行ったのか」

「それより、なんで来たのか知らないけど、よく独りで来たわね、あの子」

 真苗は昨日お母さんと一緒に来た時と同じバスに乗り、此の居酒屋までの道順を丁寧に教えられた。それでも何度か道に迷って「どん底、どん底」って念仏みたいに唱えていれば近所の人が教えてくれたそうだ。

「この名前は亡くなったお父さんが付けたの?」

「そうだ、此処は祇園花見小路行く道筋で人通りはあるのに、みんな素通りするからどん底にすれば興味半分で立ち寄ると考えたんだ」

「そうなの、でもあの子も道に迷ってもそれで憶えやすい名前で良かった」

「それでもしっかりした子なんだなあ」

「でもあの子、子供らしくないなあって思ったけど、磨美さんの連れて来た子達を見て急に子供らしくなって、やっばり今まで気を張ってたんだ」

 磨美が二階から下りてきた。







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