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谷を渡る雲2

「この子、真苗まなえちゃんって言うの ? 差出人のお母さんは深詠子、さんってどう言うこと?」

 黙っている藤波に愛想尽かして今度は子供に訊ねた。

「まなえちゃん、お母さんなんで亡くなったん?」

「今朝、亡くなった」

「なに云うてんの、あんたッ、昨日来たんやったら病気ではないわな。どないして亡くなったん、事故?」

ちゃうッ、お父さんに殺されたんやッ」

「エッ! オイオイそれはないやろう」

 藤波が急に声を張り上げると、それでは子供が落ち着かへん、と可奈子は藤波を睨んだ。

「真苗ちゃん、あんたなー、なに言うてんのか分かってんの?」

 と直ぐに可奈子が優しく子供に語りかけた。

「うん」

 真苗は少し落ち着いたようだ。

「今朝の事なら夕刊しか無理や。ちょっと店に置いてるテレビ見てみよう」

「それより今朝仕入れた材料を先に冷蔵庫に入れんとあかんのとちゃうん」

 こんな時でも気の利いた事を言う可奈子を藤波は見直した。

 取り敢えず子供を店に入れ、丸椅子に抱え上げて座らせて、藤波は慌てて軽トラの荷台から可奈子と一緒に食材を冷蔵庫にしまった。一段落して軽トラを駐車場に入れに行く。そのあいだ可奈子にはカウンター端のレジの上にあるテレビで今朝のニュースを調べさせた。リモコンでニュース番組ばかりをリストアップしていると、下村深詠子とその子供二人が殺されて行方不明の夫を警察が捜しているニュースが流れた。

「これか?」

 と訊けば真苗ちゃんはコクリと二、三度頷いた。 そこで藤波がどやったと車を置いて店に戻って来た。

「テレビのニュースでなんか云ってるか?」

 可奈子はリモコンで次々とニュース番組ばかりをまた選局し始めた。

「さっき話してた彼女、深詠子さんの名前が出てた」

 エッ! と藤波も食い入るようにテレビを見た。

「子供と一緒に、どうやら亭主に殺されたんだって」

「エッ! どうなってんのや!」




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