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藤波の恋談義3

「それはもう凄い修羅場を演じてしまった」

 此処で怪訝な顔付きをした可奈子に藤波は慌てた。

「別に切った張ったであればお互い後腐れない一時しのぎで終わったが、烈しい感情の攻防がふた月も続き、しまいにはそれ以上の情念の掛け合いになった」

 最後は彼女の情念にすがりに行くと「何しに来たの!」と二人に取っては禁断の言葉を浴びた。

「判るか、逢いたい逢いたいと片時も離さなかった人から発しられた此の言葉には、恋に狂う人間をどん底に突き落とすには十分な魔力があったんだ」

 どうしてこの人は回りくどい言い方をするのか、根がひねくれているからと解釈した。

「その陰険な別れ話。もう少し具体的に言えないの」

 あの世に半分身を置いている人達と、あの居酒屋に居るとそうなるのか、と牽制球を投げてみたが彼は無視した。

「まあそんな別れ話で揉めたのが、熱海の海岸でなく鴨川の河川敷だ。丁度上は張り出した鴨川の納涼床で、舞妓を呼んで騒いでいた。その下では鴨川の流れと張り合うほどの別れ話の修羅場だ」

「まるで歌舞伎芝居を絵に描いた様な話ね」

「あの女は取って付けたようなそう云う情景が好きなんだ」

 益々相手の存在が霞んで来てしまう。元へ戻さなくっちゃ。

「恨み骨髄なわけ」

「あの晩はなあ、その恨みは鴨川からとっくに淀川をて今は大阪湾を彷徨ってる」

「それじゃあ関空からあなたの怨念が見えるわけ」

 調子に乗って付き合わされたと可奈子はため息をついた。

「何処まで話の腰を折るんだ。そんなもんじゃあねぇんだ」

 話の腰を折るなと怒られたが、乗せたのはそっちだと可奈子も憤慨した。

 行きしなに聞いた可奈子の別れた相手とはそうかもしれないが、俺の場合はニュアンスが違った。怨みと言うより、己自身の情けなさが骨身に染みた恋だった。


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