真苗に聞く6
「ウ〜ン、それで向こうのお父さんにはもう会いたくないか」
「会えるのぉ?」
「ああ、真苗が望めば出来るが、どうだ」
少し下向いて空になったコップを眺めていた。
「真苗ちゃん、お代わりする?」
「ウン」
可奈子は冷蔵庫から取り出したレモンスカッシュを注いだ。
「啓ちゃん、どうやら難しい質問ね。それであたしも聞きていい?」
可奈子は返事を待たずに隣に座った。
可奈子は真苗のあまり、物怖じしない性格は、深詠子さんから躾けられたと思ってる。
「真苗ちゃんはいつも二階のお母さん、毎日拝んでるわね」
「ウン、それでお母さんが寂しくしないようにしているぅ」
「それでお父さんは?」
「お父さん?」
と真苗は藤波を見た。可奈子は慌てて、直ぐに向こうの家に居たお父さんの事だと言い直した。
「あのお父さんはもういいのぅ」
間を空けずに言って、何事もなくレモンスカッシュを飲んでいる。そうなると益々真苗の考えが解らなくなる。
「どういいの?」
「だって、もう帰って来れないんでしょう?」
真苗はどっちに返事をしていいか解らずにそのまま前を向いて訊ねた。
「まあ、暫くはなあ」
「どれぐらいィ?」
真苗は藤波に顔を寄せた。
「早くて真苗が中学生になる頃か、下手するともっと先かも知れん」
「どうして、わかんないのぉ?」
「それを、これからどうしてあんなことになったか調べているんだ」
「そうなのぅ?」
「それで真苗は、どうして欲しいんだ。向こうのお父さんとは?」
「ここにおいてもらえるのならどっちでもいい」
そうか、それは深詠子の影響なんだろう。これで気兼ねなく下村の心境に迫れる。