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真苗に聞く2

「どうも高嶋さんはそれに手こずっているんだ」

 ハッキリとした憎しみがない以上は、これだけは心理的要素が強いだけに本人も自覚しにくい。

「そうね、普通は込み上げてくる憎しみにえ切れずに犯行に走るけど、家族はその巻き添えを喰っただけで、責任は自分にある以上は、動機を見付けるのは難しいわね」

 藤波はパソコンを仕舞うと珈琲を飲み出した。

「それで下村の心境を予想して三木谷にメールを送った」

 真苗から聞いて勝手に想像した文章を見せると「へ〜え、説得力あるわね」と可奈子に言わすと、もう少しは進展すれば、二階の美詠子さんに報告できるそうだ。真苗もだいぶ慣れたから少しずつ小出しに聞いてみるか、と下ごしらえを可奈子と代わってもらって、真苗を呼んで隣に座らした。

「どうだ慣れたか」

「ウン」

「それでお父さんのことだけど、今ではどう思ってる」

「もう何ともない」

 これは本音なのだろうか、と暫く真苗を見た。

 屈託ない表情でおどけたように藤波を見返す表情が、何処か深詠子を想い出させる。藤波が落ち込んでるときに、励ますように言葉でなく深詠子が良く見せた表情だ。此処で深詠子ならどう対処するだろう。深詠子自身の価値と藤波の価値が交差すれば、躊躇ためらわずに藤波に寄り添うはずだ。でも教えを請う立場の真苗にはまだ無理だ。しかしそれを思わす突拍子もない小さな仕草の真苗を、ここ数週間でよく見かけながらも黙って見詰めていた。だがそろそろその答えを導き出す算段を考える時期かも知れない。

「なあ、真苗」

「なあーに、お父さん」

 ウッ、今この子は何て言ったのだ。暫く真苗を見詰めていると抱きしめたくなった。以前の肘掛けのない丸椅子ならそう出来ただろう。そうか、親父が昔ながらのあの椅子に拘ったのは、常連客同士の連帯感を大事にしてたのだ。


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