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真苗に聞く1

 店に帰り着くと真苗はスッカリ可奈子に懐いて、一緒にその日の店の出し物を作っていた。

 相変わらずビールケースを土台にして、まな板の上で調理する真苗を、藤波はまざまざと見た。深詠子は死んではいない、この子が受け継いでいる。下村は二階に居る真苗を追い詰めて何を見付けたのだろう。深詠子にそっくりな真澄には立ち止まらずに首を絞めている。なのに深詠子に顔は余り似ていないが、真澄や孝史に比べて日頃から家事を手伝う真苗は、深詠子の性格を受け継いでいると下村は気付いた。だが動転する下村にその余裕はない。あるのはただ彼奴あいつの視覚が捉えた深詠子によく似た顔だけなんだ。ひょっとしたらゾンビみたいに「此奴こいつまだ生きてるとゾッとして力任せに成仏してくれ」と首を絞める手に惜しみなく力が加わった。ぐったりした真澄を見る間もなく残った真苗を追って二階に辿り着き、見上げれば神々しいばかりの姿に立ち止まったのではないか。此の藤波の仮説を下村が頷くか「それは違う」と否定すれば、新たな事実が聴ける。ここまで回想して、これをワープロで仕上げて面会に行く三木谷に託すことにした。勿論、下村が手にした包丁の状態については、一切書かずにしたのは高嶋に今は伝えたくなかった。せっかく真苗が伝えた事実を最後の切り札に残したい。さっそくノートパソコンを取り出してメールを送った。

 カウンター席でもの思いに耽っていると、料理の手を止めて可奈子が珈琲を出してくれた。流石は立花喫茶店の娘だと感心させられる。

「啓ちゃん、遅かったわね、お昼はどうしたの?」

 まただと言うと可奈子は簡単の物を作って、それを食べた。

「今日も肝心な所で下村が動転して話が詰められなかったが、法律事務所の小間使いに会ったよ」

「ああ、あの市場帰りで店の前に立っていた弁護士さんの下っ端か、それでなんか言ってたの」

 事件のあらましは調べ終えて、後はなぜ下村がそんな行動をしたか、まだ解明されてないようだ。




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