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下村との面会2

 夏休みの間は可奈子も、市場に真苗を連れて行って、仲買人達のやり取りを見せて、藤波は市場に毎日行かなくなった。常連客の好みに合わせて仕入れるが、矢張り市場で現物を見て回り、めぼしい物があれば手頃な値段で仕入れる。それで三日に一回ぐらは行って下村との面会も増えた。おそらく高嶋が下村との面会を控えて、藤波が申し込んだ日は面会が取れるようになった。ただ弁護士の高嶋が下村と面会するときは、警察官は立ち会えずに面接時間も自由になるが、今の処は雰囲気作りに徹して今日も面会に行った。最近は下村も待ちわびてるようだ。

 この日もアクリル板を挟んで下村との対面は、以前に比べて落ち着き、彼が席に着くと単刀直入に話せた。先ずは担当の高嶋弁護士に藤波が会ったと知ると、下村の表情は良くなり、彼が高嶋を信頼しているのが解った。そこで思い切って訊ねた。

「高嶋さんとは内情を結構、話されたようですね」

「あの人は気さくな人で、よくもまあ俺みたいな犯罪者でも話を聞いてくれる」

「まあそれがあの人の仕事ですから。それでも高嶋さんは肝心なことは言ってくれないとぼくに言われましたよ」

「いや、そんなことはありません」

 思い違いがあるのかなあ。

「下村さんの思い過ごしではないですか?」

「それはない、が、あの人でも、いざ妻に関する話になると何か喉に詰まってしまうんです」

 矢張り深詠子に対しては、心の何処かで異質に思える何かがあるようだ。

「それに引き替え、藤波さんは何か同じ目線で見られて、最初に会ったときから不思議だったんですが、何となく気分が落ち着きます」 

「そうですか。それでちょっとお伺いしますが、僕の事は妻以外では三沢磨美さんからも聞いてますか?」

 磨美さんの名前を出すと愛嬌の一環なのか苦笑いされた。きっと肘鉄を食らわされた苦い思いが懐かしく浮かんだのだろう。深詠子と結婚してからは、それを帳消しにするほど磨美さんは下村家に良く出入りしている。


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