高嶋弁護士3
軽トラで店に戻ると、表には四十代のきちっとしたサマースーツに身を包んだ男が立っていた。差し出された名刺を見れば、彼は下村を担当している弁護士だ。
「下村さんとは何回が面会しているそうですね」
それで高嶋と謂う弁護士は藤波に会いに来た。
「此処では無理だ。荷物を下ろしたあと何処か喫茶店で伺いましょう」
聞けば高嶋は朝も下村に会って、昼からも会う予定だ。
藤波は今日仕入れた食材を可奈子と真苗と一緒に店に運び入れると、高嶋と二人で直ぐに軽トラで店を離れた。高嶋の仕事の都合を考えて、下村が留置されてる警察の近くの喫茶店に入った。
「下村さんですが、彼は、はっきりとした動機について躊躇ってるんですよ」
高嶋は昼からの面会時間に追われているのか、席に着くと珈琲を注文するより前に直ぐに切り出した。
「どうも藤波さん、下村はあなたの事を気にして躊躇っているんじゃないかと思うのですが……」
高嶋の仕事は余りはかどってないらしく、下村との面会もかなり詰めていた。
「警察のほうからの接触はありませんか?」
「いや、こちらから面会に出向く程度で、向こうからは一度も来ない」
「そうですか、向こうはあなたから今のところ聞き出す事はないんですね」
「と言いますと」
「下村からの聞き取りが難しくなれば頻繁にあなたから聞いて、つじつまを合わそうとしますが、今のところその必要がないんですよ」
好感を抱いた彼の表情から誠意が読み取れた。基本的に根っからの悪人はいない、と感じさす印象もこの弁護士から受けた。