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下村談義5

 ウーンと唸り、

「今日はもう夕食を済ませて、下を手伝わなくても良いか、二階で休むか」

 と屈んで真苗に顔を寄せた。菜箸を持ったまま「ウン、そうする」と頷いた。

「そうするか」

 藤波は可奈子に目配せした。

「じゃあ夕食作ってあげる」

 真苗は片付けて表側の肘掛け椅子に座った。可奈子はガスコンロに火を点けてあり合わせの材料で炒め出した。

「真苗ちゃん」

「なにぃ」

「お父さん、恨んでるか」

 横目で可奈子の作る料理を見ながら聞くと、ウウンと首を横に振った。

 子供離れして、深詠子の凄さを知らされた。

「此処の生活に慣れたんか」

「うちの居る場所は此処しかないとお母ちゃんに言われたぁ」

「いつ? あの日の前日か」

「ウン、お母ちゃんが此の店をしっかり憶えときと言われてから」

 深詠子はいったい何を考えてたんだろう。まさかこの子だけ預けるつもり? そんなことはないだろう。離婚して実家に戻るつもりならこの子に此の店を教えるはずもないやろう。

「真苗ちゃん、おかず出来たからお皿だして」

 ウンと膝掛け椅子から飛び降りてお皿を用意して、独りでご飯をよそうと可奈子が作った夕食を食べて二階へ上がってくれた。

「真苗の話を聞いたか」

「ちょっと腑に落ちないわね」

「ちょっと処やないで。深詠子は何処どこで下村が可怪おかしいと睨んだのやろうか?」

「離婚を持ち出した時から、ある程度は覚悟していたのかしら?」

「なにを」

 まさかと思うが、あそこまでやるとは考えてないように見えた。留置されてからまだ一度も会ってない磨美さんは「あの男ならやりかねん」と否定的だ。犯行前の下村を知る磨美さんと犯行後の下村を見る藤波に相違があるとすれば、あの犯行を境にあの男自身の周囲を見る眼が変ったのか。

「下村が道連れを考えたのは間違いない。その方法は突発的な行動か、それとも計画的なものなのかを考えると、何が何でもお父さんの話を何処まで聞かせていいもんか深詠子は思案したんだ」

 ひょっとしたらあの子は、父親のそんな一面を見ていたのかも知れない。


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