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第91話 不穏な客

「順調に育てるね」


 植物はすくすく育っている。

 環境自体に大きな変化はないからだろうか、新しい4種の植物にも、魔法の効果が上手く作用している。

 この調子なら成長して繁殖も出来そう。

 繁殖も出来ていれば、今年中に食べられそう。

 それにこの調子なら、来年には量産に向けて調整が出来るかも知れない。


「次商人来た時、料理用の道具買おうかな。売ってなければ鉱石を買うか」


 今の僕には料理用の道具がない。

 商人が売っていればいいけれど、なければ自力で作るのもあり。

 僕専用の料理器具とか作るの楽しそう。


 ……人……ではないか


 後ろに気配がして僕は振り返る。

 2人の男性が、こちらに向かって歩いてきていた。

 この2人に見覚えは無い。

 不良のような見た目の男と、セールスマンに居そうな見た目。

 見た目的に言えば、珍しい組み合わせに感じる。


「何用かな、いや、君たちは何者?」

「はっ、完全な擬態も出来てない雑魚か」

「そのようですね。しかし、王が望んだ理由は頷けます。白龍ですか」

「白龍なんて初めて見たな」

「えぇ、珍しいですからね」


 僕が問いかけた質問は、スルーされてしまう。

 その上で初対面で早速、罵倒をされた。

 イラッとくるけれど、見た目に違わない態度でむしろ感心してしまう。

 あと普通に僕を無視して話も始めてる、分からない。

 隣に居た男が僕に向かって話し始める。


「感謝なさい。貴方は我らが王の傘下に下れるのです」

「感謝しろ。王直々にご指名だ」


 話が全く分からない。

 てか質問に答えないで話を進めないで欲しい。

 さも当然かのように、2人は話している。

 けれど、僕は全く着いていけていない。

 そもそも、まず僕はこの2人のことも知らない。

 一応、世間的に有名なのだろうか。

 来てから山で引きこもっている僕には分からない。


 ……王? 傘下? いやいや、何の話だよ


「王とか傘下とかより具体的な話をしてくれないかな。まず何者?」

「おや、何者かも知らないとは……私はアーヴィン、我らが王ヴルトルの遣いです。こちらはウーヴェン」


 セールスマンのような見た目の方が名乗る。


 ……セールスマンみたいなのがアーヴィン、不良がウーヴェンか、多分覚えた。


 多分2人は龍種だ。

 完全に近い擬態をしているから人にそっくりだけど、雰囲気が飛竜に近い。

 そしてその王様も龍なのだろう。

 龍の王ならば、龍王と呼ぶべきか。

 間違いなく面倒な奴に目を付けられた。


 もっともまだ正体が龍とは限らない、あくまで僕の予想に過ぎない。

 でもまぁ、龍でもなければ、龍の僕をわざわざ傘下に入れようとは考えないだろう。

 これがありがた迷惑と言う奴なのだろうと思う。


「我らが王がてめぇを傘下に入れる許可を出した。感謝して大人しく来い」

「いや、急に言われても……そもそもその王様のこと知らないし」

「もしも、万が一にでも断る場合、お怒りに触れるかも知れませんよ?」


 ……脅し、問答無用か


 脅しが早い。

 今の反応から結構、手馴れている印象がある。

 逆らう者には容赦はしないスタンスなら、傘下に下ってもろくな事にはならなそう。

 そもそも、そういう派閥のような、分かりやすい地雷に足を踏み入れたくない。


 ただ余計面倒な怒りには触れたくない。


「もしお怒りに触れたら?」

「龍の大群が貴方を喰らいに来ます。そして貴女もこうなるでしょう」


 男は何かを地面に投げる。

 僕はそれを見てヒッ、と声を上げる。

 それは切り離された腕だった。

 大量の血に濡れている誰かの腕。

 腕は人の腕にそっくりだけど、よく見たらウロコが見えるから不完全な擬態をした龍なのだろう。

 そしてこれを脅しに使うということは……


「……殺したか」

「えぇ、群れていたお仲間諸共、あぁ、でも女子供は傘下に入れましたよ。貴女の場合は……殺されはしないでしょう」

「その分、酷い目には合うだろうがな」


 2人は下卑た目を向けてくる。

 心底、気持ちが悪い。

 あの目も、殺したことを誇るような価値観も、どちらも嫌いだ。

 反吐が出る。


「それは遠慮願いたいけど、傘下にはならない」

「はっ、そうかよ。なら……」

「我のナワバリで何をしている。地龍共」


 声を遮り冷酷な声が響く。


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