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第86話 顔からの転倒

 時が経ち1週間、植物はすくすくと成長した。

 まだ完全に成長しきっていないけれど、もう1週間くらいしたら育ち切りそうだ。

 あの2つは、成長する速度が早い植物だったのだろう。

 その上で成長を促進させる効果の魔法によって、本来より早く成長を遂げた。

 最初に埋めた2つの植物も枯れていない。

 新しい果実を作っている。

 1個作って仕事終わり、ではなく規定数か、枯れるまでか、繁殖を続けるようだ。


 僕は森の中に、新しい植物を探しに出ている。

 育てるなら一気に複数の植物を育てたい。

 そして、出来れば夏のうちに夏に育つ植物を集めておきたい。

 来年以降になる予定ではあるけど、季節関係の植物を一年中育てられる環境を作りたい。

 知識はないけれど、魔法があるこの世界ならやりようが幾つかありそうだ。

 それに現在は2種類、特に食材になるのは片方だけでは物足りない。


 木々の隙間を通る風が肌を優しく撫でる。

 少し奥に進んだからだろうか、草木の匂いがより強く鼻腔をくすぐる。

 あまり代わり映えはしないけれど、自然豊かな風景を見て楽しみながら探す。

 せっかくの自由な行動を、義務感でやりたくない。


「うおっ……これ不味い」


 歩いていると、僕は突然体勢を崩した。

 僕は、自分の足が何かに引っかかったと気づいた。

 しかし、咄嗟のことで反応が出来ない。

 顔からステンと転んでしまった。


「ぎゃふっ!?」


 遮る物はなく、顔から地面に叩きつけられた。

 痛い。

 特に痛みを訴えている鼻を抑えて、仰向けに変えて上半身を起こす。

 草に足を取られたのだろうか、草が生い茂っている森の中を歩いていると結構ある事だ。

 注意不足だった。


「いたた、草にでも引っかかったのかな」


 何に引っかかったのか気になり、自分の足を見る。

 すると、足首の辺りにツタが絡まっていた。

 ツタに足を取られたようだ。


 ……ツタかぁ。よくある奴だぁ


 足元に伸びているツタは、森の中でよく見かける天然の罠だ。

 意外と頑丈で、足を動かしてもちぎれにくい。

 そして、たるみもなくしっかり張られていることが多いのだ。

 挙句に、周囲の草に同化してカメレオン状態。

 そのせいで気づかず、転倒する人が多い。


「あれ、これ」


 足に絡まったツタをちぎると、妙な感覚があった。

 何かと思い、ツタを持ち上げて確認する。

 ツタに何かが付いている。


 ……これってエンドウ豆?


 細長い緑色の物だった。

 指で触れる。

 細かい毛のような物が全体に生えている。

 でこぼこがあり少し力を込めると中に入っている物の位置がズレる。

 豆か何か物が入っている感覚だ。

 見た目は、あちらの世界にあるエンドウ豆という物によく似ている。


 ……でも大きいし豆も小さい?


 僕が知っているエンドウ豆とは大きさが違う。

 大きくても10cmくらいなイメージ、僕が持っているのは20cmはありそうな個体だった。

 中の豆は、逆に少し小さいのが沢山入っている。


 ……食べれるかな?


 鼻を近寄せて匂いを嗅ぐ。

 植物らしい匂いが微かにするくらいで、特に変な匂いはしない。

 色も植物らしい艶やかな緑色で、特に腐敗している様子もない。

 軽く手で汚れを払い、少しだけ口に入れる。


「……うん? 味がしない」


 皮の部分と呼べばいいのだろうか、その部分を食べたけれどなんの味もしない。

 それどころか、無駄に硬く噛み切らないと口に残る。

 味がないから美味しくないし食感も最悪で、僕は食べるのをやめて吐き出す。


 ……見た目だけだったか。食用にはならなそうかなぁ


 新しい食材を見つけたと思ったけれど、残念ながら外れだった。


「豆も食べるだけ食べてみようかな」


 皮が味しなかったから余り期待はできないけれど、豆の方も食べてみる。


「……え?」


 少し皮の方を齧る。

 変わらず味がしない、豆をまた食べてみる。

 青臭さはあるけど、食べられない程の不味さはない。

 充分食用に出来る味。

 ただ青臭さがあるから生ではなく、焼いたり炒めるなどの調理が必要だろう。


 ……よし、これも育てよう


 何個かちぎって、木の箱に仕舞う。

 そして、他の食材を求めて森を再び彷徨う。


【注意事項】

 現実世界では無闇に植物を口に入れる行為、豆の生食は食中毒等の危険性が高いのでしっかり調べて適切な処置をしてから食べましょう

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