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第81話 新しい魔法の制作(非戦闘用)

「シク、なにか良い案ある?」

「案?」

「植物を育てる良い案」

「植物を育てる? これまた人みたいなことをする物だ」


 僕が質問を投げかけると、背後にスッと現れる。

 シクは、首を傾げて聞いてくる。

 確かに、これも人みたいな行動だ。

 龍種は野菜より肉派なイメージがあるし、家庭菜園なんてやるイメージは無い。


「そう、自力で育てたら食料がより安定して手に入るから、今のところは2種類だけど」

「良い案……育てるには何が要る?」

「うーん、土壌の栄養と水、あと日光かな。この辺揃えたら育つ印象がある」

「なるほど」


 家庭菜園もしてはいなかった僕は、植物を育てるノウハウを持ち合わせていない。

 せいぜい、学校で学んだ簡単な知識程度。

 だからとりあえず、必要に感じる物を並べた。

 これらを揃えれば、育つ気がする。


「栄養、水、陽の光か……」


 シクは悩んでいる。

 真剣に考え中のようだ。

 シクならば、僕には考えつかないようなアプローチを考えてくれるだろう。

 頼り切りにはせず、僕も何かないか考えておこう。


 ……栄養は置いといて、水から……水は近くにあるから……運ぶ物かな


 水は新鮮な物が近くに大量にある。

 運ぶための道具。

 今は2種類で1つずつのため、わざわざ一度に多くの水を運ぶ必要もない。

 小さくて持ち運びが楽な物。


「そうだ、ジョウロ作ろうかな」


 ジョウロは家庭菜園などでよく使われるイメージがあるから、今は丁度いいかもしれない。

 作るとしたら水漏れしないように石で作るもしくは、木材を使いながら水漏れしない作り方か。


 ……環境はほとんど変わらないから環境に関しては何もしない方が良さそうかな? あとは……害虫対策とかするべきかな。動物系は居ないけど虫は出るだろうし


 農業において虫が厄介というのは、何かで聞いたことがある。

 昔見たニュースの内容で虫が大量に発生した結果、その付近の作物のほとんどがやられてしまったというものがあった。

 確か空を覆うほどの真っ黒な虫の集団が、全てを食い尽くさんとする勢いの……思い出すだけで身体がゾワッとする。

 虫は、どうしても慣れない。

 あの手の騒動は、毎回結構な被害が出ているイメージがある。

 それにこの山の生態系を考えると、虫が多い可能性は高いのだ。


 この山は、神狼族が支配していている。

 そして、オオカミ以外の動物を見かけない。

 見かけていないくらいには、この山では他の動物種の生息数が少ないと考えられる。

 だからこそ、虫が増える。

 天敵が少ない環境で、のびのびと繁殖している可能性が高い。

 害獣はともかく、害虫対策は必須になりそう。


「土壌の栄養というのは具体的には?」


 悩んでいたシクが聞いてくる。


「土の中にある栄養が足りないと育たないんだよ。だから足りなくなった時に外部から栄養を補充できる手段が欲しい」

「なるほど、土の入れ替えは? 入れ替えてしまえば栄養は維持出来よう。土の魔法ならば容易に出来る」

「それ以外」


 土の入れ替えは、確かに僕も考えついた。

 栄養が減った土を栄養のある土と入れ替えてしまえば、栄養を維持が可能。

 しかし、そのサイクルで積み重なった栄養の減った土が、自然にどのような影響を与えるのかが不明瞭だ。

 もしそれで、森に悪影響が出たら意味が無い。

 この山で生きる以上、この山の維持が最優先事項。

 僕は人のような山の開拓がしたいのではなく、あくまで自分が住む環境を作りたいだけ。

 この山及び神狼族と共存することが不可欠。


 僕は専門家じゃないから、考え過ぎていて実際は悪影響の起きない杞憂の可能性はある。

 だけど、知らないからこそ、下手にリスクがありそうな手は取りたくない。

 取り返しがつかなくなる。


「栄養になる物に関しては、目星はついているのか?」

「枯葉や枯れ草、動物の糞とかその辺」

「植物を枯らせば良いのか?」

「育った植物が枯れて分解されることで栄養になる……だったかな?」


 その辺は、ほとんどうろ覚えである。

 微生物が云々みたいな話は聞いたことあるけど、具体的な話はさっぱり。


「活性化させれば良い。種を少ない栄養で育つようにして枯れたら栄養にする。これで完成」

「そんなことが?」

「魔力は物体に対して影響を及ぼすことが可能、その性質を使って魔法を組めば良い」

「あぁ、そんなこと言ってたね」


 シク先生の魔法講座の際にも、そんなことを言ってた覚えがある。

 物体そのものに影響を与える魔法。

 魔法をかけて少ない栄養で植物の成長を促進させる、そして枯れた植物を分解させる方法。

 これなら、確かに栄養が極端に減る事は避けられる。


 ……それなら全部食用ではなく、枯れる用を物も用意しようかな


 育てた全てを食用にしては、少ない栄養で育てても土に栄養が戻らない。

 それでは、せっかく少ない栄養で作っても意味がほとんどない。

 だから、育てた植物の一部を栄養のサイクル用にわざと枯らす。

 そうしたら、ちょうど良いくらいに栄養が保てる可能性がある。


「よし、その魔法を作ろう! 式は定期的に使うから詠唱かなぁ。言葉はあえて長文にしようかな。効果対象は植物に……」

「植物が取り込む栄養なら効果対象は土の方が良かろう。最も土系統の魔法の領分である事は変わらない」

「なるほど、確かに! 対象を周囲の土に栄養となる成分の活性化」


 シクのアドバイスを元に、魔法の制作に取り掛かる。

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