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第80話 塩辛い果実

「この茎、葉っぱは苦かったんだよなぁ」


 茎が美味しかった植物の葉っぱも食べてみたけれど、苦かった。

 苦すぎて食べるのは、難しそうだ。

 食べるなら茎部分だけになりそう。

 それでも、食べられそうな物を見つけられたのは、かなり大きい。

 この植物を育てたい。


 ……うん、これ育てよう。抜いて小屋の近くに


 根っこごと引き抜いて、小屋の近くの地面に根っこの部分を土に埋めておく。

 だいぶ雑なやり方をしたけれど、とりあえず今回は実験も兼ねている。

 最初から、成功するとは思っていない。

 失敗したら試行錯誤、有難いことに同じ植物はこの周囲に沢山生えている。

 何度も、チャレンジは可能だ。


 ……季節で変わるだろうから室内で作れたらいいけどそこまでの設備作ることが出来ないからな


 植物によって、暑さや寒さに弱いなど変わる。

 今の時期を考えるとこの植物は暑さに強い、夏の植物だろうか。

 年中管理できる状態にでもしないと、冬になると枯れてしまう。

 そうなると冬、おおよそ半年間は、自給自足で食べ物を得られない。

 果実類も、長期保管できる分しか残せない。


 ……冬は冬で早めに食べられる植物探しかなぁ。いや、冬前には商人来るしその時に色々と話聞こうかな


 あの商人は、物知りなイメージがある。

 だから、専門的では無い範囲で植物関連についても何かしら知っていると考える。

 それに色々と売っていたから、中には食用の植物の種などを売っている可能性は高い。

 植物の種なら恐らく値段が安いだろうから、取引しやすそうだ。


「奥へ行くかぁ」


 森の奥に入り、植物類を捜索する。

 生態系は余り変わらないけれど、ちらほら小屋付近の森にはなかった植物を見つける。

 もぎ取って、もぐもぐと食べる。

 その中で1つ、目を惹いた植物を見つけた。

 その植物には、大きな白っぽい果実のような物が複数成っていた。


 ……これはなんだろう。果実かな?


 1つもぎ取る。

 光が反射し細かい白い粒が、キラキラと輝いている。

 手に取った触感は、砂のようにザラザラしている。匂いは強くないのかあまりしない。

 軽く、1口食べてみる。


 ……うぐっ


 僕は顔を歪ませて、思わず吐き出してしまう。

 吐き出したがこの果実が、とんでもなく不味いという訳では無い。

 不味い物も僕は食べれていた。

 これは、その不味さよりもさらに身体が拒絶するような物だった。


「……なん……だこれ……すごいしょっぱい」


 しょっぱい、塩辛かったのだ。

 まるで、塩の塊を食べたかのような、とんでもないくらいの塩辛さを持っていた。

 ジャリジャリしている感覚も塩に近い。


「うへぇ……塩の塊じゃんこれ……いや、でも少し果実っぽい甘さはあるかな」


 とても食えた物じゃないと感じた。

 ちょっとしょっぱいくらいならいいけれど、身体が拒絶するレベルでは食用には難しい。

 少し果実っぽい甘さは感じたけれど、塩辛さが強すぎるのだ。

 適当に、近くの植物をむしって口直しをする。

 不味いけど、少しマシになった。


「とんでもない植物を引いたなぁ」


 適当に食べていたから、こういう事もあるだろうとは考えていた。

 その想定を遥かに超える物だった。

 気をつけた方がいいかもしれない。

 危険なのは、毒だけじゃないと学んだ。


 ……うん? 塩辛い?


 しばらくして口の中の塩辛さが無くなって、少し冷静になった。

 この果実、ただ塩辛い果実ではなく、物凄く味が塩に似ているのだと気がついた。

 僕自身、思わず塩の塊と発言したくらいには、塩っぽいのだ。

 果実のような甘さはあるけれど、食感も、味も、塩に似ている。

 冷静に考えて、ここまで似ている果実は珍しい。

 それに、軽く考えるだけでも役に立ちそうだ。


「塩として使えそうだな」


 生や軽く焼く程度で食うだけだったけれど、これを使うだけで劇的に変化する。

 塩は食には重要だ。

 大量だと毒だけど、一定の量までは生物の生命維持にも必要とも聞いたことがある。


「甘い塩か……ありだな」


 植物を根っこから、抜き取って小屋に戻る。

 先程、埋めた植物の近くに埋める。


 ……ここは……日が強く当たるから木陰に近い環境作るべきかな


 環境が似るように小屋の屋根を伸ばして、軽く森の中と似たような日陰を作る。

 元々生えていた環境を似せることは重要だと思う。


 人間の中にも突然環境が変わると、ストレスや体調の不備が起きるケースが存在する。

 植物も生きている、それなら環境の変化に大きな影響を受けてもおかしくない。


「とりあえずこの2種類かな」


 とりあえず、食材になりそうな植物に、調味料になってくれそうな果実。

 この2つが育ってくれれば確実に食が変わる。

 ちゃんと育つか心配だけど、楽しみだ。


 ……土や設備に関することを考えよう……何か出来ることないかな


 捜索は終わりにして小屋に戻って関係することで、何か出来ることがないか案を考える。


現在80話、ここまで読んで頂きありがとうございます

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