第7話 住
ゴーレムは、近くの木に向かって歩いていく。
そして木の目の前で停止する。
次の命令を待っているようだ。
すぐに僕は命令を下す。
「目の前の木を破壊」
命令を出すとゴーレムは、拳を振りかぶって木に勢いよく叩きつける。
ゴンッ、と大きな鈍い音を立てて拳型にへこむ。
ゴーレムは何度も、拳を振るい木を叩き続ける。
数発殴ったところで、メキメキと大きな音を立てて木が、自重を支えられなくなり倒れていく。
「思ったより早い。よし、木を運んで」
ゴーレムは、倒した木を抱えて運んでいく。
運ばれた木は、崖寄りの水場の近くに置かれる。
それからまたゴーレムは、木のあるところに戻って同じ事を何本も繰り返す。
ゴーレムが木を薙ぎ倒すのには、あまり時間はかからず、必要分は15分もせずに集まりきった。
「そんなに大きくなくていいから木はこのくらいあればいいかな」
物体操作に切り替えて、置かれた木に手をかざす。
物体操作は、ゴーレム創造だけではない。
対象の物体を操る、形を作り替える力。
対象は目の前に置かれている木々。
作るのは木のゴーレムではない。
木の形が粘土のように変化していく。
……この量は一度だと足りないかな。そうだ、いくつかに分けよう
一気に変化できる大きさには、限りがある。
作る予定のものは、あまり大きくないため、三度に分けて形を作る。
それから分けて作った物を、合わせて、接合して、完成させる。
「形はこれでよし、後は……打って」
ゴーレムに命令を出す。
動き出したゴーレムは、杭を打つ要領で4本の木の杭を地面に突き刺す。
ゴーレムが深く突き刺したのを、確認して木の杭に触れて、突き刺さった部分の形を変化させる。
続けて地面にも物体操作を行い、杭の周囲の土を固めて抜けなくする。
……これでそうそう抜けないかな
「完成」
そして完成した。
物体操作の力のおかげで、楽に作業ができた。
作ったものは家、衣食住の住の部分。
最も家と言っても、1部屋しかない簡素な小屋だ。
人が2人くらいなら、何とか寝れるかもしれない程度の広さしかない。
食事と睡眠、雨風をしのぐためのもの。
ひとまずこれで十分、贅沢は言わない。
僕には建築関連の知識はないため、しっかりとした家のような立派なものは作れない。
近くにあった木を利用して物体操作で、無理やり作り出したもの。
ぶっちゃけ良い物では無い、プロからしたら子供のお遊びに見えるだろう。
中に入って確認をする。
「やっぱり暗い」
明かりがないため、小屋の中は真っ暗だ。
簡易な扉を開きっぱなしにする事で、外から入る陽の光と、木で作った簡易的な小さな窓から入る陽の光くらいしかない。
……まぁこの小屋は寝るとき用だからいいかな
昼間は外で活動する。
小屋は夜、寝る時に使う。
小屋の中で炎を出せば、明かりは作れるけれど、この小屋は木で作っている。
もしも、火を起こした時に、家のどこかにその火が触れてしまったらたちまち火事になる。
そうなったら全焼は、避けられないだろう。
……他にも何か作ろう……あっ、果実を保管するもの作りたいな
余った木で、木の箱を作る。
物体操作で隙間なく作る事で、気密性の高い木の箱を作り出せた。
取った果実をここに入れれば、地面に置いたりゴーレムに持たせるよりも、安全に保管ができる。
……他には……今のところは特にはないかな
特に思いつかないので、終わりにする。
これで衣食住の食、住が最低限レベルだろうけど、整ったと言える。
後は衣服、衣服に関しても、物体操作で何とかできるけど、問題は材料の方。
今は衣服の材料がない。
……衣服の材料って綿とか羊毛とかだよね。この付近で見かけてない
綿のような植物も、羊のような生物も見ていない。
この森で見た生物は、2mあるあのオオカミと人間。
人間から服を剥ぎ取ることが、確実ではあるけれど、ちょっと罪悪感がある。
狙うならオオカミ、つまり毛皮。
……オオカミの毛皮……確かそれでも作れるんだっけ。次会ったら倒して毛皮剥ぎ取ろう
「住が完成したから……果実集めよう。念の為に数日分は集めておきたいな」
天気が悪くなった時に、外には出たくない。
そのため、数日分の果実を森に集めに行く。
集めておけば、天気が悪くなった時に、小屋で晴れるまで待機ができる。
そして数時間後、歩き回り数日分の果実を、木の箱に詰めて小屋の元に戻った。