第65話 葉っぱの試行錯誤
襲撃はなく、平和な日常が訪れる。
3人に伝言を任せたからだろうか、騎士や冒険者などを見かけない。
ちゃんと脅しも混ぜたから、手を引いてくれた可能性はある。
襲撃がないのは、有難い。
このまま、平和が続く事を僕は望む。
朝、目を覚まして欠伸をする。
湖で顔を洗い、果実を1つ摘む。
予め、準備しておいた葉水を飲む。
葉水は、風味がよく緑茶に味が似ていて美味しい。
これは、お茶に似た成分を持つ葉っぱなのだろう。
飲み物が1つ増えただけで、生活のレベルが上がった気がする。
ただ葉水が若干緑茶よりも、苦味の強い飲み物であったのが気になるところ。
……目が覚めるからありがたいけど、ちょっと砂糖欲しいなぁ
僕は苦いのは、得意じゃない。
むしろ、苦手な部類だ。
コーヒーをブラックでは、飲めないくらいには。
身体が変わっても味覚に違いは無さそうだ。
「商人から買っていた物か。葉の色が水に移っている? 蝕む訳では無いか」
シクが興味深そうに、僕の持つコップの中を覗き込んでいる。
葉水を初めて見るのだろうか?
「原理は知らないけど、葉っぱの成分が水に混ざるみたいな感じかな」
「これは葉の匂いか」
「そうだよ。飲む?」
「では頂こう」
「了解」
葉水をコップに注いで、シクに渡す。
シクは、コップを両手で優しく持つ。
ちまちまと、飲み始める。
……可愛い。あの様子だと飲み慣れていないのかな。水も飲んでるところ見た事ない気がする
シクは、本人曰く食事を取らないでも、生きていけるらしい。
実際、生活していて食べているところを、ほとんど見ていない。
僕が食事中の時に、たまに来て一緒に摘むことがあるくらい。
だから、飲み慣れていない可能性が高い。
「苦いから気をつけて」
「これが苦味か。悪くない」
「それは良かった」
自分の分を飲み干して、空のコップを置く。
ちまちま飲み続けているシクを見ながら、考える。
……乾燥した葉っぱ、この辺に生えてる物でも出来たりするかな
葉水に使われているのは、葉っぱを乾燥させた物と聞いている。
なら他の葉っぱで試したら、どうなるか気になった。
幸い近くに、大量に生えている。
種類も豊富に揃っている。
時間はあるから、試すのはあり。
……乾燥は水洗いして水分取ったあと吊るしておけばいいかな
小屋から出て、草を掻き分けて森の中に入る。
近くに生えていた葉っぱを、適当にむしる。
良い悪いは分からないから、とりあえず見た目でヤバそうな物と、既に枯れている物以外を取っていく。
……これはなんかヤバそう
毒々しい色の花が咲いている植物を見つけた。
見るからに、ヤバそうな雰囲気がある。
毒がありそうなので、取らないでおこう。
もっとも、僕自身は毒があっても問題ない。
毒を体内で生み出せる力がある以上、毒に対する耐性があると考えられる。
ただ他の人たちがどうか分からないから、毒っぽいのは避けておく。
飲ませなくても気化した毒で倒れるなど、あったら凄い困る。
現状は、毒の対応が出来ない。
ササッ、と洗い軽く熱して水分を飛ばす。
そして、木の棒を突き刺して室内に吊るす。
乾燥は時間がかかる。
気長に待つ。
数日後、一部の葉っぱが良い感じに乾燥した。
しっかりと乾燥している事を、確認して早速試す。
乾燥した葉っぱを、軽く炙り水に浸けて待つ。
色が変わったことを、確認して飲んでみる。
「うん……うぐっ!? ま、不味い……こっちは……に、にがぁいぃ。うぅ、そう簡単には行かないよねぇ……」
そう簡単に美味しいものが、見つかる訳もなく失敗に終わった。
まだ乾燥していない物が、何種類か残っているけど、これは期待は薄い。
……そもそも葉水に合うものじゃなかったのか作り方が違うのかなぁ
素人の浅知恵で試したこと。
やり方が違う可能性は高い。
とは言っても知識がないせいで、どうすればいいか分からない。
ひとまず残すのは、勿体ないので一気に全て飲み干して朝の鍛錬を開始する。
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