第6話 初めての食事
目を覚ます。
時計がないから時刻は分からないけれど、明るく朝にはなっている。
土のゴーレムの足は硬すぎず、柔らかすぎないで枕にちょうどよかったようで、ぐっすりと眠れた。
良い枕を手に入れた。
……これはいい枕手に入れた。土のゴーレムの足、覚えておこう
眠りの質は重要。
睡眠の善し悪しが、その一日の行動に大きく影響が出てしまう。
起き上がり、ふらふらと水場に行く。
しゃがみこみ両手で水をすくって顔にかけて洗う。
「うっ、冷たい……」
両手を水の中に入れた時点で、わかっていた。
けれど、顔にかけてさらに冷たさを感じた。
ただその冷たさのおかげで、しっかりと目が覚めた。
「目が覚めた、さて、次は……あっ」
ぐぅぅとお腹が鳴る。
どうやら腹がすいたようだ。
一日、食事を抜いていたから自然だろう。
ちょうど良いから、次は食事の時間にしよう。
「何か食べようかな。今あるのは……」
ゴーレムの手を見る。
ゴーレムの手には、昨日しっかりと持たせていた果実が残っている。
取ってから時間が経っているため、新鮮ではないけれど、腐ってはいないように見える。
持っているのが岩のゴーレムだからか、新しく虫に食われた形跡もない。
……腐ってはなさそう。食べられるかな
1つ適当に選んだ小さな果実を軽く潰す。
中身が見えて、汁が指にたれる。
見えた中身を少しだけ、かじり口に含む。
舌に乗せて、味を確認する。
……うぐっ、すっぱい。うへぇ……
すっぱい、かなりすっぱい。
食べられないレベルではないけれど、これを1つ丸ごと食べるのは、僕には難しいと感じるほどの味だ。
果汁を指に塗る。
それから10分程度待つ。
「異変はなし、少量なら問題はないか? ただ味がダメ、無理だこれ」
果汁を塗った指を見て、変化がない事を確認する。
舌や身体にも異変は起きていない。
10分程度待ったのは、毒の確認のためだった。
毒を持つ果実なら何かしらの影響が出るかも、と踏んでいたけど何も起きていない。
自分の体で毒の確認は、危険な行為。
だけど、今はやむを得ない。
食料を得る為に必要な事であり、自分の身体以外に実験体となる物がないのだ。
ゴーレムは生物ではない無機物だから、毒の実験には使えない。
……もう少し試すかな。すっぱいのは偶然外れの個体だった可能性もあるし……
同じ果実を1つ手に取り、丸ごと食べる。
個体差を期待していた。けれど、残念ながらこちらもかなりすっぱい。
この果実自体が、そもそもとしてすっぱい果実の可能性が出てきた。
我慢して何とか飲みこむ。
すっぱいけど、味はそこまで悪くはない。
……毒がなかったとしてもこれは食料には向かないかな。もしくは食料がない緊急事態用
餓死寸前ならともかく、今はまだ果実の味を気にしてしまうようだ。
すっぱ過ぎて、食べ続けることは難しい。
他の果実を手に取る前に、1つ考えが思いつく。
……切り替えたら毒耐性を得られたり……
目に触れて、切り替える。
毒の能力、体内で毒を作り出して操る力。
毒を作り操るのだから、ある程度の毒であれば体内で処理ができるんじゃないかと閃く。
最もこれは確実ではない、でも試す価値はある。
……一応準備しておこうかな
ゴーレムを操作する。
ゴーレムを自分の近くに置いて、何かあった時用に待機させておく。
水場に近づいて、何かあった時にすぐに水が使えるように準備をする。
「これでよし、行けるかな」
毒の能力が使える状態で、1つずつ慎重に果実を口に入れて味わっていく。
甘い、辛い、苦い、苦すっぱいなど、果実によってだいぶ味が違う。
中には口に入れて、不味いと感じる物もあった。
そう言う物に限って、食べた後も少し残るのが辛い。
食べた果実を、味で分けておく。
しばらく待機する。
しかし、身体に異変はない。
毒耐性を持っているのか、偶然毒のある果実を引かなかったのかは不明。
とりあえず美味しかった果実を数個食べる。
数種類の果実を食べた事で、腹はかなり満たされた。
取っていたのは、小さい果実ばかりだったのだけど、もしかしたらこの身体は少食なのかもしれない。
……これとこれは見つけたら覚えておこう。これは無理、こっちは念の為に覚えておく
食べやすい味の果実の見た目を覚えておく。
しばらく、果実が食事のメインの可能性がある。
他の食べ物も食べないと栄養が偏ると聞くけれど、今のところ、果実と魚しかないから偏っても仕方がないと割り切る。
「さて、食事が終わったし一仕事と行こうかな。動け」
3体のゴーレムを操作する。
ゴーレム達は、命令通りに動き出す。