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第58話 連日の戦闘

「……はぁ」


 僕は、ため息をつく。

 今日は魔法使いの集団が来た翌日。

 つまり、連日呼んでもない客が来た。

 店なら客が来るのは嬉しい。けれど、残念ながらここは店じゃない。


 ……来るとしても時間開けて欲しいんだけど


 単純に時間かかるし、面倒くさい。

 次は、冒険者か騎士だろう。

 魔法使い達が何かの組織所属だとしたら、連日来るとは考えづらい。

 騎士が来てから、少しは時間が経ってるから来てもおかしくない。


「面倒くさい」

「ここまで龍殺しの称号を欲するか」

「そんな凄い称号なの?」

「然り、龍種は強い故に龍殺しとは英雄の証」

「僕みたいな基本無害な龍殺したところでそいつは英雄じゃないでしょ」

「こちらの事情など気にしない」

「だろうね」


 諦めて、準備をしておく。

 相手の力量が分からないから、本気で行く。

 どうせ、また殺しに来た人達。

 話はできない。


「出てきたか……お前が……龍?」

「即刻立ち去れ」


 小屋から出た瞬間に、魔力を解放して圧をかける。

 先手速攻。

 この圧でビビって、逃げ出してくれたら楽。


「ひっ」

「なんて魔力量」


 ……男1人と女2人のパーティか、あぁハーレムでも作る気かな


 軽く見る。

 服装からして騎士ではなく、冒険者。

 それぞれ違う格好をしている。

 服装で、大体の役割が分かるのは助かる。


「その角、人ではないか。人に近いとは聞いていたが……まさかここまでとは」

「龍を初めて見るのは仕方ないけれど情報なしで来たの? 馬鹿でしょ」


 僕は、何人も生かして逃した。

 だから、既に情報は集められるはずなのだ。

 特に見た目なんて僕は隠れていないから、鮮明に記憶されていてもおかしくない。

 その情報すら集めずに殺しにくるのは、相当の自信家か馬鹿くらいなものだろう。


 ……女2人は怯えてるけど……


 男に関しては、怯えてる様子がない。

 数倍はある魔力を発しているのに。

 多分、面倒な相手だ。


「馬鹿とは失礼な奴だ。情報ならちゃんと得ている。危険な邪龍だと」

「確かに邪の方ではなく蛇の方なら合ってる」


 僕は、蛇龍だ。

 でも、この男の言ってるのは、蛇の方ではなく邪の方なのだろう。

 酷い勘違い。

 危険なのは、殺しにくる人間の方。


「蛇の方? 何を言ってる」

「あぁ、こっちの話だから気にしなくていい。やるなら早く来いよ」

「お前は何故人を襲う。人を襲う必要は無いだろう」

「は?」


 僕から、人に攻撃を仕掛けたことはない。

 襲いかかったことはない。

 殺しに来た相手を、迎え撃っただけだ。

 この男が得た情報というのは、果たしてどんな物なのだろうか。

 相当、悪い感じに歪曲されてそうだ。

 呆れて何も言えない。


「わざわざ人を食らう必要も無いだろ。他にも食べるものはあるだろ」

「龍にとって人が餌なら食うのはおかしくない」


 食ったことない。

 人間なんて不味そうで、食う気にならない。

 だけど、人食いの龍は居てもおかしくないだろう。

 そりゃそうだ、他種族なんだから。

 人が他の生物を食うのと何も変わらない。

 人は、食われないなんてのは甘い考えだ。


「だが……」

「連日来られてこっちは気分悪いんだ。早く失せないなら潰す」


 警告は最初にした。

 だけど、去る気は無い。

 なら戦う。

 話で時間を稼いで、強力な魔法をと考えていてもおかしくない。

 地を蹴り接近する。

 今動けるのはこの男だけ、なら速攻叩いて無力化して終わり。

 加減して拳を振るう。


 ……加減したとはいえ人が気絶する威力だぞ


 拳は防がれた。

 防御魔法じゃない、剣で防がれた。

 並の剣なら、ヒビくらい入る威力はあると思う。

 なのに傷1つ付いていない。

 最悪、妖刀のような武器の可能性はある。


「人に害をなすなら容赦はしない」

「正義ヅラするな。気持ち悪い」


 僕は、吐き捨てて拳を構える。

 男は、剣を構えて待っている。

 接近して拳を振るう。

 反応して、剣で攻撃を受ける。

 男の反撃を避けて、蹴りを繰り出す。

 避けられ、蹴りは空を切る。


「はぁぁぁ!」


 攻撃を避けて、反撃を繰り出す。

 男は剣での防御と回避をしつつ、剣で大きく振りかぶった攻撃を仕掛けてくる。

 互いに、攻撃を入れられないまま戦いが続く。

 蹴りを叩き込むけど、防がれる。

 一旦、大きく飛び退く。


 ……なんだこいつ


 戦い続けていて、妙な違和感があった。

 この男は、間違いなく強い。

 強いはずなのに動きが雑だ。

 老人や少女のような技量を感じない、それどころか、回避や攻撃は素人の動きに見える。

 代わりに、反応速度や身体能力が高い。

 龍の身体を持つ僕とやり合えている。


 ……こいつ本当に人間か? それとも……


 素の身体能力か、魔法による強化か。

 今は、判別する時間はない。

 戦いを続ける。

 蹴りを繰り出し、回避したところに炎の球を当てる。

 炎の球は確実に命中したけれど、男の着ている鎧は傷1つつかない。

 確かに、殺さないようにと加減はしたけれど。

 あの鎧も、ただの鎧じゃないようだ。


 ……廃課金装備か?


 炎の球と一緒に突っ込んで、拳を叩き込む。

 衝撃が届いたのか、男は僅かに体勢を崩す。


「なんて力だ。やむを得ない」


 男は大きく剣を振るった後、何かを呟く。

 その言葉は、かすかに僕の耳に聞こえた。


「聖剣解放」


 ……聖剣?


 聖剣と呼ばれた剣の形か、変化して膨大な魔力を放出し始める。

 男は、剣を天高く掲げる。

 これはやばい。

 そう本能が訴えてきた。

 すぐさま、防御に切り替える。

 そして、何重にも防御の力を張る。

 1つじゃ足りない。


 男は、剣を振り下ろした。

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