第54話 剣の鍛錬
翌日
休んだことで、体力は回復した。
完全回復ではない気はするけど、連日あのレベルの戦闘にでもならなければ、動くのは問題はなさそう。
傷は戦闘中に札で治癒して治してあったから、残っていなかった。
戦闘中に、傷は治せていた。
しかし、服は治せていなかった。
一瞬でも反応が遅れたら、死ぬような戦いにそんな暇はなかったのだ。
だから、酷い具合にボロボロになっていた。
特に上半身側。
多分、上半身のほとんどが露わになっていた。
つまり、胸が露出していたと考えられる。
……まぁ見えてても上半身だけだったし良いか
僕自身、元々は男なので上半身裸くらいなら、抵抗感は少ない。
身体が変化しても、感覚は男の時のまま。
下はさすがに抵抗感ありまくりだけど、胸くらいならと思ってしまう。
子供の頃にプールで上半身裸になっていたし。
それに僕は飛竜の時は、龍形態になるために服を脱いでいた、あの時は全裸だ。
それに比べたら、戦闘中の破損程度なら正直気にならない気がする。
そもそも、戦闘中に気にしてる暇がない。
服は遺物のため、後でしっかり元に戻した。
普段はボロボロのままではなく、ちゃんときちんと服を着る。
損傷しても修復されるのは、便利で助かる。
これ一着で、だいたい何とかなる。
本当に良い買い物だった。
……よし、剣の練習だ
剣を、手に持ちそれっぽく構える。
僕は刀ではなく、剣を選んだ。
そして、シクに少しだけ力を注いで貰った為、強化してある。
ただ、刀のような特殊な力は宿っていない。
注いだ本人のシク曰く、普通の剣より頑丈になった程度らしい。
それで十分。
壊れづらい武器というだけで、有難い。
一応、他にも武器はある。
無貌が武器の形になるのは、商人が見せていた。
見せたということはおそらく武器として使用が可能なのだろう。
もっともその場合は、今着てる服が無くなるから奥の手くらいでしか使わない。
「素振りとかすればいいのかな?」
剣術は知らない。
僕はそういう系の物を習っていないし、動画でちょっと見たことがある程度。
とりあえず、適当に振るう。
ひたすらに振り続ければまぁ多少は、上手くなるだろうくらいで挑む。
とりあえず、何度か素振りをしてから、他の特訓の為に準備運動を行う。
「それがやり方?」
「素振りはやるって聞いたことあるから多分そう」
「多分」
「僕は剣術知らないからね。習うこともできないから独学でやるしかない」
準備運動を終えたら、ゴーレムを準備する。
ゴーレム相手で試してみる。
ゴーレムの拳を、剣で受けて防ぐ。
身体に衝撃が走る。
ジリジリ、と押し合う。
力を込めて、大きく弾く。
体勢を崩したゴーレム目掛けて踏み込んで、胴体に素早く一閃。
剣は、ゴーレムを真っ二つに切り裂いた。
岩のゴーレムを、両断できるのは中々。
攻撃を受けても、問題はなさそう。
ゴーレムを修復して、戦いを続ける。
何度もゴーレムを切り裂いて、剣での戦いの感覚を身につける。
実戦式で経験を積む。
ゴーレムの数を増やし、敢えて数的不利の対面を作って戦う。
人間相手は、数的不利になると考えられる。
老人や紫髪の剣士はおそらく例外、基本的には集団で挑んでくる。
数的不利でも動ける立ち回りを覚えたい。
攻撃を避け切り裂き、攻撃に合わせ拳を切り落とす。
体術も混ぜて戦う。
「今日、魔法の制作は?」
座って休憩中の僕を、上から覗き込むようにシクが現れて聞いてくる。
「魔法制作ももちろんやる、札使い切ったからまた補充しないとだし」
「なら時間」
「もうそんな時間か。わかった」
シクと、一緒に小屋に戻る。
手持ち分は、戦闘時に1枚を除いて、消費して最後の1枚も少女に使った分で使い切った。
小屋の中にまだ残ってはいるけど、作らないと新しく足りない。
それに、他の魔法も欲しい。
もしシクが刀を投げてくれなければ、負けていたのは僕の方だ。
まだまだ、戦いの準備が足りない。
小屋の中で魔法制作を始めた。