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第51話 激闘

 物体操作で、土を動かして足を掴む。

 間髪入れずに真正面から、拳を振るう。

 少女の背後からゴーレムの不意打ちも、同時に行う。


 ……回避は不可、これなら


「……これも凌ぐか」


 剣の攻撃を避けるために、大きく飛び退く。

 足を封じても、効果は薄かった。

 僕の攻撃を躱して、迫り来るゴーレムの拳を切り裂き凌いだ。

 ゴーレムの攻撃なら切り裂けると、即座に判断したのだろう。

 詰められても冷静。

 戦い慣れることがよく分かる。

 使い古された防具は、それだけ多くの戦いを行ってきた証だった。


「なら」


 自分の目の前に、生成した土壁を作り出す。

 そして、土壁を蹴り砕く。

 土の塊が飛び散り、少女に襲いかかる。

 土の塊の軌道は、予測不可能。

 土の塊とはいえど、飛び散った塊が直撃したらただでは済まない。

 強者相手には、小細工だ。

 真正面正々堂々と、では勝てない。

 なら、僕は勝てない戦は選択しない。

 死んで守れる誇りなんて要らない。


 少女は回避は無理と判断したのか、剣を振るい土の塊を切り捌く。


 地を蹴り、接近し拳を振るう。

 ゴーレム3体の攻撃も合わせ、4方向からの同時攻撃。

 物体操作で、土を動かして体勢を崩させる。

 足を拘束しても、無理でも体勢を崩してしまえば、人は思うように動けない。


 そのはずだった。

 体勢を崩した状態で、攻撃を躱された。


 ……はぁ!?


 そんなのありかよ、と叫びたくなる動きで攻撃を避けられた。

 体勢を崩した状態で上半身を地面に近付けた。

 自然に倒れる動きじゃない、自分で動かしている。

 地面に倒れる直前で停止して、片手で剣を投げてゴーレムを一体破壊。

 続けて片手で身体を支えて、僕の足を地面スレスレで蹴った。

 痛みはほとんどない。しかし、バランスを崩し僕は転倒する。


 一体のゴーレムの拳を蹴り上げて、最後の一体の攻撃を躱す。

 転倒の際にも、視線を少女から離さなかった僕には、全てが見えていた。


 体勢を戻した少女は、拳を振るう。

 魔力を込めた拳だ。

 ゴーレムの胴体を叩き、吹き飛ばす。

 素早く剣の元に行き拾い、構え直す。


 僕も、そのタイミングで起き上がれた。


 ……あれは人間の動き? ブレイクダンスやってる人なら行けそうな……いやさすがに無理か?


 人間か、疑わしくなってきた。


「……加減してたのか?」


 あの動きは、今までの動きと比べ物にならないほどに早かった。

 まるで本気を出していなかった者が、危なくなり少し本気を出したように見えた。

 本当にそうだとしたら不味い。

 こっちは殺さないように攻撃を加減しているとはいえ、回避やゴーレムへの命令、他の行動に関してはしっかりと全力だ。

 全力で押し切れない相手が、まだ本気ではないとか最悪がすぎる。


「…………」


 少女は答えない。

 会話をする気はないようだ。

 まだこっちは体力は残っている

 この身体に無尽蔵と言えるくらいの、体力があって良かった。

 ただ相手も息を切らしてるようには見えない。


 ……龍形態になって叩く……いやぁあの剣の正体がわかってないんだよなぁ


 龍形態でも、攻撃を避けることはできる。

 しかし、的がでかくなる。

 もし、あの一撃が龍のウロコを貫くのなら龍形態でも厳しい。

 見た限り魔法を使っている様子も、中距離斬撃を放つ様子もない。

 物体操作から、炎に切り替える。

 炎の球を放ちながら、接近する。

 ゴーレムでは攻めきれない、他の力で挑む。

 龍形態は、まだ取っておく。


 少女は、炎を切り裂いて突っ込んでくる。

 この世界では炎は切れるものらしい。


 ……切られた……炎が切れるのがこの世界の常識かな!? どうなってんだ


 剣の攻撃を躱して、素早く蹴りを振るう。

 僅かに動き避けて、剣を振るってくる。

 速度は変わっていない。

 目の前に、燃え上がる炎を発生させる。

 放つのではなく、出現場所に維持した状態。

 炎が切れても、熱は存在する。

 火力も高めている炎なら、その熱はとんでもない温度のはず。

 少女は、後ろに飛び退く。

 火傷を恐れたのか。


 他の能力も試す。

 出し惜しみはできない、次の相手に情報が渡る危険も気にしてる暇はない。

 身体強化で攻める。

 素早く避けて、攻撃を仕掛ける。


 ……これも避けるのか


 先程よりも早い、タイミングも悪くない攻撃なのに、少女は反応して回避する。

 反撃の一撃に拳を当てて逸らして、蹴りを勢いよく打ち込む。


 ……かっ……たぁ。なんだこれ


 蹴りは、横腹を捉えていた。

 直撃した蹴りは、硬い物に阻まれた。

 身体強化ありでの蹴りなんて、並の防具なら軽々と砕け散る一撃。

 なのに、砕けるどころか傷1つ付いていない。


 ……防具の硬さじゃないなこれ


 身体強化のまま戦う。

 互いに押し切れないまま、長引く戦闘。

 少女の速度が上がっている。

 僅かに反応が遅れて、避けきれなかった。

 服を切られ、胸元が露出してしまった。

 風が肌を撫でる。

 感覚からして結構、はだけたようだが、今は気にしている暇はない。

 集中して、戦いを続ける。


 ……確実に早くなってる


 まだ対処出来ているけれど、このままだといずれ速度を抜かれるリスクがある。

 これ以上、長引かせるのは危険。


 ……あれを使うか


 僕は一旦、飛び退き覚悟を決めて能力を切り替える。

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