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第49話 紫髪の剣士

 シクの謎から2週間ほど過ぎた。

 2週間の間にあったことと言えば、殺しの称号欲しさに命を狙ってきた冒険者パーティが、襲撃をかましてきたくらいだ。

 特に強くはなかった。けれど、諦めの悪い連中だったので、全員纏めて雑に気絶させた後に集落の近くに置いてきた。

 人目に付きやすいところに置いたので、無事回収されて治療を受けているだろう。


 それ以外は、鍛錬と魔法制作、小屋の改良くらいな物だった。

 鍛錬は順調に出来ているけど、上達したかがよく分からない。

 自分の動きとなると、あんまり実感がない。

 僕の場合、技を覚えようとしてるわけでもないことも実感のない原因だろう。

 技なら完成度が上がったみたいに分かる……気がする。武術家じゃないからそれも分からない。

 見てるシクに聞いても、見てるだけなので分からないらしい。


 魔法制作は分かりやすく順調、治療の札は予備も多く制作できた。

 普段持ち運ぶ用以外にも、小屋に何枚かの予備を置いてある。

 煙幕の魔法も、完成していた。

 色々と試行錯誤した結果、結構良い物が作れたと自負している。

 ふふんと自慢したら、シクに褒められつつ呆れたような表情で見られたけど。


 ただ出来上がった物は、発動の準備が戦闘中だと難しい物だったため、完成した後に事前に準備を行った。

 効果範囲は、この小屋を含む一定の範囲に限られるけれど、発動が早い。


 今日も新しい魔法を考えていると、小屋の外から大きな音がした。

 何か複数の物が落ちる音。


 ……ゴーレムに反応はない


「なんの音?」

「なんだろう? でもゴーレムの反応はないな。敵襲ではなさそう」

「そうか」

「崖が少し崩れたのかな。怖いなぁ」


 ゴーレムの反応がない。

 なら、襲撃ではないだろう。

 崖が少し崩れたのかと思い、様子を見るために僕は小屋の外に出ようとした。

 けど、足を止める。


「なんだ?」

「なんか違う気がする」


 ほんの少しだけ、違和感をあった。

 小屋の外に出るのを辞めて、止まってしっかりと考えてみる。


 ……うーん、あっ、あぁ、崖なら音の方向が逆か


 違うことに気付いた。

 音がしたのは、崖とは反対側。

 それに聞こえた音も崖で崩れが起きた時ほどに、大きい音ではない。

 なら、崩れたのは別の物。

 この付近にある物と言えば、僕が動かせるゴーレムくらいなものだ。

 木々が生えているところは、少し距離がある。

 飛竜の炎で、近くの木々は燃えてしまっているから、近くにはほぼ無い。

 動かないゴーレムの置物も前に作ったけれど、今では崩して岩を小屋の改良や道具作りに使ってしまった。

 ゴーレムは頑丈だから、少しなにかあった程度では崩れない。


「うん? なっ……」


 僕はようやく気づいた。

 何が崩れたのか。

 そして、ゴーレムの反応がなかった理由についても同時に理解した。


 ……動かないゴーレムを破壊したってことは、動くことを知ってるのかな


 基本的に動かす命令をしていない時は、置物のように止まっている。

 初見で動くと、見抜くのは難しいだろう。

 考えられるのは、情報を得ている存在。

 情報提供者の心当たりは複数ある。

 厄介なのは、しっかりとした情報を得て尚挑みに来てること。

 戦闘の情報を得てなお動くのは、相当の自信家か本当に強いか。


 ……相手の数も分からない……どうしようかな


 間違いなく、小屋の近くにいる。

 ゴーレムの位置からして、扉の目の前に居てもおかしくない。

 扉を開け出たら、即一撃を入れられる可能性がある。

 それは怖い。


「敵襲かも」

「ほう、つまりゴーレムがやられたと」

「そうだと思う。この付近、他に物はない」

「どうする?」

「居留守は小屋破壊されそうだから行くかな」


 治療系魔法を込めてある木の札を、複数個ポケットに仕舞う。

 穏便に済ませたいけれど、穏便に済んだことがないので戦闘になること前提で動く。


 ……札の準備は完了、煙幕はいつでも発動可能、よし行ける


 落ち着いて、深呼吸を1度する。

 覚悟を決めて、扉を開け放ち外に出る。

 1歩前に出ると同時に周囲を素早く見渡す……予定だったけれど、必要がなかった。

 犯人は、小屋の扉から数メートル離れたところで立っていた。

 ボロボロの防具を身につけた紫髪の少女。

 武器は剣1本、周囲に人がいる気配もない。

 魔力量を確認する。

 特段、多いようには感じない魔力量だ。

 少女は僕に気付くと、その場で使い古された鞘から剣を引き抜いた。


「貴女を殺す」


 少女は、手馴れた動きで剣を構える。


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